西村栄男さん、27年ぶりの新彗星発見を語る

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7月に静岡県掛川市の天体捜索者・西村栄男さんが、ぎょしゃ座に新彗星を発見し、西村彗星(C/2021 O1)と命名された。中村・西村・マックホルツ彗星(C/1994 N1)以来、自身2つ目の新彗星となる。

【2021年9月7日 星ナビ編集部

取材レポート:谷川正夫

「星ナビ」2021年10月号「News Watch」より抜粋)

静岡県掛川の五明(ごみょう)は1994年、西村栄男さんが1つ目の彗星を発見した丘でもある。当時は15cm双眼鏡による眼視捜索だった。今回も、この地で2つ目となる新彗星を発見するに至った。

西村さん
西村さんが指差す新彗星の発見方向。粟ヶ岳の上、高度10°で発見

西村さんの観測は、夕方、観測場所へ行き、夏なら20時ごろから新彗星発見を狙って西の空を掃天撮影。次に新星捜索のために天の川を掃天撮影して終了。22時ごろ帰宅して、23時半から24時ごろまでパソコンで撮影画像をチェック。それから仮眠をとり、1時~2時に明け方の撮影に出かける。4時ごろ帰宅し、撮影画像をチェック。これでは夜の短い夏はほとんど眠れないではないかと思ってしまう。「夏期に晴れが多かったら体がもたない」が、夜の長い冬は睡眠時間がとれ、天気の良い日が続いても大丈夫とのこと。

7月22日の発見について、「1時半ごろ起床し、自宅から15分の五明へ出発。2時8分から撮影を開始しました。前夜、新星捜索で天の川を撮りたかったのですが曇っていたので、まずはわし座近辺からカシオペヤ座くらいまで撮影して。そのあと彗星探しのために南東から北東の空まで撮りました。夜明けが近づいてきたので、あわてて露出時間を短くして4時ごろまで撮影して。その中に今回の新彗星が写っていました」と語る。

彗星の発見画像
新彗星は奇跡的に電線と電線の間に写った。薄明の進む中、オリジナル画像は露出オーバーだった(掲載画像はコントラストをつけたもの)。7月22日3時47分撮影、キヤノン EOS 6D+EF200mm F2.8→F3.2、15秒露光。画像クリックで表示拡大

シミュレーション画像
ステラナビゲータ11で発見時の写野(200mm)を再現

西村さんは現在72歳。池谷薫さんの彗星発見に感化され16歳から天体捜索を始めて56年。その半分は何も見つからなかったが、見つからなくてもずっと探し続けてきた。楽しさや変化があり、友達もできた。浜松スペースハンタークラブの仲間とも励ましあってきた。

これまで西村さんは、彗星の他に新星29個、矮新星25個を発見している。パンスターズやアトラスなどの地球近傍天体発見のサーベイ観測プロジェクトによって、彗星が根こそぎ発見されている昨今、一人の捜索者が一生探して見つかるかどうかという彗星は格段に感動があるという。発見後3日間くらい興奮状態でほとんど眠れなかったそうだ。

「今思えば僕が見つけなければ何も知らずに去って行っちゃった彗星かもしれない。その後の捜索で新彗星の領域を撮ったがとても確認できない。恥ずかしがり屋の彗星だったのかな」と語ってくれた。

星ナビ2021年10月号

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