金星探査機「あかつき」、軌道投入から間もなく4周年

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金星探査機「あかつき」は、12月7日に軌道周回開始から4周年を迎える。11月19日に開催された説明会で、今後の運用の見通しや紫外線観測で得られた10年規模の変化などが発表された。

【2019年11月25日 ファン!ファン!JAXA!

金星探査機「あかつき」は2010年5月に打ち上げられ、2015年12月7日に金星周回軌道へと投入された。約10日周期で金星を周回しながら、6台の観測機器を用いて金星の大気や雲、風といった気象現象を調べている。来月7日で周回開始から4周年を迎えることになる「あかつき」は、これまでに金星を約130周し、6.4金星年分のデータを取得してきた。

「あかつき」と金星の想像イラスト
金星周回軌道に投入される「あかつき」の想像イラスト(提供:ISAS/JAXA

11月19日の説明会では、これまでに3万枚以上の撮影を行ったLIR(中間赤外カメラ)、1万6000枚以上の撮影を行ったUVI(紫外イメージャ)のそれぞれによる研究成果が発表された。このうちLIRの成果については10月31日付ニュース「世界初、金星全領域の雲の動きを可視化」で既報なので、もう一方のUVIに関する成果について紹介しよう。

金星は全体が濃硫酸の厚い雲に覆われている。硫酸は太陽光を反射する物質であるにもかかわらず、紫外線で観測すると金星の表面に暗い模様が見られるのは、太陽光が未知の物質によって吸収されているためと考えられている。吸収スペクトルは紫外線の幅広い波長域で見られ、太陽光加熱の最大60%ほどは未知の吸収物質によるものと考えられる。

金星の擬似カラー画像
2018年3月30日に取得されたUVIのデータから作られた金星の擬似カラー画像(提供:PLANET-C Project Team

独・ベルリン工科大学のLee Yeon Jooさんたちの研究チームは、「あかつき」のUVIと、NASAの水星探査機「メッセンジャー」(水星へ向かう途中のフライバイ探査)およびハッブル宇宙望遠鏡、ヨーロッパ宇宙機関の金星探査機「ビーナスエクスプレス」のデータを組み合わせ、長期にわたる金星の反射率(アルベド)の変化を調べた。

すると、10年スケールで波長365nmにおける反射率が大きく変化していることがわかり、2006年ごろに比べて2012年ごろは反射率が半減していること、その後現在まで再び反射率が増加している様子が明らかになった。

金星の反射率の変化
金星の反射率(アルベド)の変化(提供:Lee et al.)

反射率が高いと太陽光をよく反射することになるが、このときには大気の加熱が小さくなるので風が弱くなる。反射率が低いときはその反対だ。こうした風速の変化はビーナスエクスプレスおよび「あかつき」によってとらえられており、シミュレーションの結果とも一致している。

今回の成果は、10年スケールの長期にわたる金星の変化をとらえたもので、金星が現在進行形で気候変動を見せている可能性を示している。波長365nmにおける反射率が大きく変化する理由は明らかになっていないが、研究チームによれば外的な要因としては太陽活動の変化や宇宙放射線量の変化、金星内部の要因としては二酸化硫黄(亜硫酸)ガスの量の変化などが考えられるという。

今後「あかつき」は2020年度末まで運用が続けられる見込みで、長期間日陰に入ることを避けるための微小な軌道変更も予定されている。

金星探査機「あかつき」観測成果に関する記者説明会(19/11/19)ライブ配信