月の両極の表面に水の氷の存在を示す決定的証拠

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インドの月探査衛星「チャンドラヤーン1号」の観測データから、月の両極の表面に水の氷が存在していることを示す決定的な証拠が見つかった。

【2018年8月28日 NASA

米・ハワイ大学およびブラウン大学のShuai Liさんたちの研究チームが、2008年にインド宇宙研究機関が打ち上げた月探査衛星「チャンドラヤーン1号(Chandrayaan-1)」が観測したデータを調べ、スペクトル中の近赤外線の波長に3つの吸収線の特徴を見つけた。この特徴からLiさんたちは、月の表面の深さ数ミリメートル以内のところに水の氷が存在すると結論付けた。

検出された月の氷は、南極と北極に近いところに分布しており、南極付近では集中して、北極付近では広範囲にわたってまばらに存在している。これらの氷のほとんどは、クレーター内部の暗い「永久影」の部分にある。永久影は太陽の光が決して届くことがなく、温度が最高でも摂氏マイナス160度ほどにしかならない非常に冷たい場所だ。

月面の両極における氷の分布
月の南極(左)と北極(右)における氷の分布(青い点)。月面図は灰色が暗いほど低温であることを表している(提供:NASA)

過去には、月の南極の表面に水の氷が存在する兆候が間接的に見つかっていたが、他の現象でも説明可能なものであり確実な証拠とは言えないものだった。決定的な証拠が直接観測されたのは今回が初めてである。

一方で、非常に低温の「コールド・トラップ」のうち3.5%にしか水の氷の存在が検出されていない。このように表面に水の氷が少ないことは、月の形成や進化の過程と関連があるかもしれないと考えられている。

月の表面に水の氷がじゅうぶん存在していることが明らかになれば、地下の氷よりも採取しやすい水資源として、将来の月探査や月滞在にも利用できるかもしれない。

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