金星探査機「あかつき」が明らかにした太陽風加速

このエントリーをはてなブックマークに追加
金星探査機「あかつき」を利用した観測から、太陽から離れた場所でガスが加熱され、太陽風が加速されるメカニズムが明らかになった。

【2014年12月18日 JAXA

 太陽から吹き出す「太陽風」の流れは、太陽上層のコロナの100万度という高温によりプラズマが外向きに押し出されることで生じると考えられている。地球軌道ほどの距離で観測されるような時速約150万~300万kmにまで太陽風が加速されるためには、太陽表面からかなり離れたところでもガスが加熱され、高温が保たれる必要があるが、それがどのようにして実現するのか調べる手だてはなかった。

JAXA宇宙科学研究所と東京大学の研究者らは、2011年6月から7月にかけて金星探査機「あかつき」が外合(太陽をはさんで地球と反対側)の位置に来ることを利用し、「あかつき」から地球に向けて発信した電波から、太陽風のプラズマを伝わる細かい波動を探った。太陽観測衛星「ひので」による観測も合わせると、太陽の近くではかなり遅い太陽風が、太陽半径の5倍程度の距離では時速150万kmにまで急激に加速するようすや、太陽風のプラズマを伝搬する周期的な密度変動(音波)などが観測された。

「あかつき」を使った太陽風観測の模式図
「あかつき」から発信した電波は太陽風を通過すると変化する。この変化を解析することで、太陽風の速度を測ったり、太陽風内の密度変動をとらえたりすることができる(提供:発表資料より。以下同)

一連の観測結果から、(1)太陽表面で作られたアルベン波(プラズマ中を伝わる磁力線の振動)が太陽から遠く離れたところで不安定となる(2)その結果生じた音波が衝撃波を生成(3)衝撃波がプラズマを加熱し太陽風を加速、というシナリオが導かれた。このシナリオは近年の数値シミュレーションに基づく予想ともよく合っており、「あかつき」がとらえた音波は、まさにコロナ加熱の現場を映すものと考えられる。

「あかつき」の観測に基づく太陽風加速のイメージ
「あかつき」の観測に基づく太陽風加速のシナリオ模式図。クリックで拡大

研究チームの宮本麻由さん(東京大学大学院)は、「今後はコロナホールでの新たな観測や、電波の偏光計測によるアルベン波の観測との組み合わせなどによって、波動から太陽風へのエネルギー変換過程についてさらに理解が進むと期待しています」と抱負を語っている。


探査機の位置と航路

天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」では、「あかつき」など主な探査機の位置や航路を表示することができます。