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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

太陽は23歳!? 皆既日食と太陽の科学

表紙写真

  • 日江井榮二郎 著
  • 岩波書店
  • B6判、128ページ
  • 2009年7月
  • ISBN 978-4-00-007500-8
  • 価格 1,575円

この不思議なタイトルに惹かれて平積みから本書を手にした評者は、著者名を見てすぐにカウンターに並んだ。日江井先生の著書なら、みなさんにお勧めするのに間違いがないからだ。教育者であり、太陽物理学研究者であり、また五島プラネタリウム学芸委員として、評者にもご指導いただいた先生の人柄からも、本書はみなさんにお読みいただくのをお勧めすべきなのだ。

というカタい話はさておき、23歳ってなにか。詳しくは本書第6章をお読みいただきたいが、太陽が誕生してから何回銀河系の周りを公転したか、がヒントである。23歳という青年期の星として太陽を捉えてみようというわけだ。赤色巨星でもなければ白色矮星でもない。誕生間際の不安定な星でもなければ、ましてや死にそうな星でもない。そのような星の研究が、天文学に如何に大切であるかが、よくわかる本なのである。

また、2009年7月22日にあった皆既日食で日本は盛り上がったが、日食観測隊に数多く参加され、太陽研究の激動期に多大な実績をあげられた先生の、太陽とのお付き合いの様子が本書の隅々から読み取ることができる。特に第1章の最後にある、明星学苑の学生さんや卒業生・父母・教職員のみなさんとのパラグアイでの皆既日食観測のエピソードは感動的である。「知識は学べば身につくが、経験しなければわからないことがある」という言葉は、大変に重い。太陽が欠けること自体、古代人にとっては驚愕のことだっただろうが、曇っていても昼間が夕方になることは、畏れ・恐れ・怖れ・虞を感じ、戦争すら止めてしまうのも当然なのかもしれない。まさに経験しなければわからないことである。

本書を通じて、太陽について、もう一度考えてみよう!

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