日本の宇宙機3ミッションによる金星の同時観測に成功
【2020年11月9日 JAXA】
国際水星探査計画「ベピコロンボ(BepiColombo)」は、JAXAの水星磁気圏探査機「みお(MMO)」およびヨーロッパ宇宙機関の水星表面探査機「MPO」の2機を電気推進モジュール(Mercury Transfer Module; MTM)で水星に送り届け、周回軌道に投入するミッションだ。水星到着までにベピコロンボは惑星探査機としては史上最多となる合計9回の惑星スイングバイを行うが、その最初となる地球スイングバイを今年4月10日に、2回の金星スイングバイのうち1回目を10月15日に実施した。
10月15日のスイングバイの際、ベピコロンボは金星の地表に約1万kmまで接近した。その前後、「みお」に搭載されている科学観測装置が金星周辺のプラズマを測定した。さらに、これにあわせて、現在金星を周回する唯一の人工衛星である金星探査機「あかつき」と、地球を周回する惑星分光観測衛星「ひさき」も金星を観測した。日本の探査機や観測衛星が3機同時に1つの惑星を観測したのは初めてのことだ。
金星スイングバイ前後における「ベピコロンボ」「あかつき」「ひさき」の位置関係 。画像クリックで拡大表示(提供:JAXA)
「あかつき」は太陽に照らされた雲の構造を紫外線で、雲表面の温度分布を中間赤外線でとらえた。一方、「ひさき」は極端紫外線で金星高層大気の分光観測を行った。
「あかつき」の紫外線イメージャおよび中間赤外線カメラが2020年10月15日13時ごろ(日本時間)にとらえた金星の(提供:Planet-C Project Team)
「みお」は、プラズマ粒子観測装置(MPPE)で太陽風および金星周辺プラズマ環境を観測し、電子の分布が太陽風中と金星周辺で異なる様子や、金星由来とみられるイオンの存在(プラズマシート)をとらえた。また、プラズマ波動・電場観測器(PWI)では、水星到着までの限定的な観測制約のもとでも信号をとらえられることが確認された。金星周辺のプラズマ環境についてはまだ解明されていない点も多く、「みお」の観測データは貴重なものとなる。
「みお」がとらえた金星スイングバイ時の観測結果(提供:JAXA)
今回の共同観測で得られた金星大気や周辺のプラズマ環境に関するデータを組み合わせた解析が進むことで、これまで得られなかった金星の新たな成果の創出が期待される。ベピコロンボでは今後も、惑星スイングバイ時や惑星間空間巡航時に科学観測を実施していくとのことだ。
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