月の内部に水が存在する新たな証拠

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アポロ計画による月のサンプルの分析とインドの探査機「チャンドラヤーン1号」のデータから、月面に広範囲に広がる火山性堆積物の中に初めて水が検出され、月にかなりの量の水が存在する可能性が示された。

【2017年8月1日 Brown University

月の内部の水や揮発性物質の大部分はすでに失われていると長年考えられてきたが、2008年に米・ブラウン大学のAlberto Saalさんたちの研究チームが、アポロ15号と17号によって地球に持ち帰られた火山性のガラス粒子内に水の存在を示す痕跡を検出し、状況が変わってきた。

2011年にはガラス粒子内の小さな結晶の形成が詳しく調べられ、地球上の玄武岩の一部に含まれる量と同程度の水がガラス粒子に含まれていることが明らかになった。月のマントルの少なくとも一部には、地球と同じくらいの水が含まれていることを示すものだ。

「重要な問題は、アポロ計画で持ち帰られたサンプルが月内部の全体的な状態を示しているのか、それとも『乾いた』マントル内の一部に異常に水の豊富な領域があることを示しているだけなのか、ということでした」(ブラウン大学 Ralph Millikeさん)。

Millikenさんと米・ハワイ大学のShuai Liさんは、月のサンプルの計測結果と、月面上の火砕流堆積物が存在する領域の温度に関する詳細なデータとを合わせて、どんな鉱物や化合物が存在し火山堆積物の含水量がどの程度かについて調べた。探査データとしては、インドの月周回探査機「チャンドラヤーン1号」によるものが用いられている。

その結果、アポロ15号・17号が含水ガラス粒子のサンプルを採取した場所に存在する火砕流堆積物を含め、ほぼすべての火砕流堆積物に水が存在する証拠が得られた。「水を豊富に含む堆積物の分布が鍵ですが、月面上に広がって分布していることから、アポロ計画で持ち帰られたサンプルが例外ではないことがわかります。月の火砕流堆積物全般に水が含まれているようです。同じことはマントルにも当てはまるかもしれません」(Millikenさん)。

水の存在を示した月面画像
水の存在を示した月面図。色のついた領域(とくに赤や黄のところ)は周囲よりも水が多く存在する(提供:Milliken lab / Brown University)

月は、地球に火星サイズの天体が衝突して生じた残骸から形成されたと考えられているが、その際に発生した熱のため水の形成に必要な水素がなくなり、月の内部は乾燥しているはずだと推測されてきた。「月内部の水の起源はまだ大きな謎ですが、水が衝突の熱に耐えられたのか、月が完全に固まる前に小惑星や彗星によって水がもたらされた可能性が考えられます」(Liさん)。

今回の研究成果は将来の月探査にも影響を与えそうだ。火山性の粒子自体に含まれる水の重量は100g当たり0.05gほどで、とても多いというわけではない。しかし、堆積物は大量に存在するので、そこから水を得ることは可能とみられている。「これまでの研究で、月の両極にある太陽光が当たらない領域に水の氷の存在が示唆されていますが、火砕流堆積物はもっとアクセスしやすい場所にあります。将来の有人月探査で必要となる大量の水を地球から運ばずに済むことは大きな前進であり、私たちの研究成果は新たな代替え案を示唆しているのです」(Liさん)。

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