太陽風の未知領域「ミクロとマクロの境界」で磁場のねじれが成長する新現象を発見

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太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の観測データの分析から、太陽風中の磁場のねじれ構造が「ミクロ」と「マクロ」の境界という未知の領域で、より大きな構造へと成長する新現象が明らかになった。

【2026年10月19日 東京大学大学院 理学系研究科・理学部】

日常のなかで見られる乱流は、分子同士の衝突や壁との摩擦などの影響を受ける。一方で、非常に希薄で粒子同士の衝突がほとんど起こらない宇宙空間のプラズマは「無衝突プラズマ」状態にあり、このプラズマがどのように乱流へと発展し、エネルギーや磁場の構造がどう変化するのかなどはよくわかっていない。

磁場のねじれや連結の度合いを示す「磁気ヘリシティー」が大きな空間構造へどう成長するかも未解明の問題だ。乱流のエネルギーが大きなスケールから小さなスケールへ移る現象を「カスケード」、その逆を「逆カスケード」と呼ぶが、磁気ヘリシティーが、プラズマを流体として扱えるマクロなスケール(磁気流体力学スケール)でどちらの過程をたどるのか、議論が続いてきた。

独・ブラウンシュバイク工科大学理論物理学研究所の成田康人さんと飯澤正登実さん、東京大学の横井喜充さんを中心とする国際研究チームは、NASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ(PSP)」が太陽から0.1~0.8au(約1500万~1億2000万km)の範囲を飛行中に取得した、高精度な磁場・粒子データを分析した。

2018年8月に打ち上げられたPSPは、炭素複合材製の耐熱シールドで機体を守りながら、約100万℃に達する高温プラズマが広がる太陽コロナの中を飛行して観測を行う探査機である。これまでに太陽表面から約620万kmまで接近し、人工物として太陽に最も近づいた記録を持つ。

太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の想像図
太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の想像図(提供:NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben)

分析の結果、太陽風の乱流中で、磁場の揺らぎのねじれ(回転)の向きが、大きなスケールと小さなスケールとで反対になる構造が明らかになった。このように、異なる向きのねじれが共存する構造は「バイヘリカル構造」と呼ばれ、流体として扱えるマクロな領域と、個々の粒子の運動が支配的なミクロな領域の境界付近で見られた。「乱流は構造のない不規則な運動を示すものの、スペクトルには明確な構造が見られます」(飯澤さん)。

また、バイヘリカル構造が太陽から遠ざかるにつれて低周波側へ系統的に移動している様子が初めてとらえられた。こうした移動は、構造がより大きな空間スケールへ成長していることを意味するが、その場の物理条件から予想される変化とは合わない。磁場のつながりや配置(トポロジー)が、非局所的な過程を通じて進化していることを示唆する結果だ。この成長は、マクロなスケールを対象とする従来のカスケード理論では扱われてこなかった境界領域で起こっており、ミクロとマクロを統合する新たなプラズマ乱流理論につながる成果である。

ヘリシティー密度スペクトル
PSPの観測データから得られた正規化磁気ヘリシティー密度スペクトルを、太陽からの距離ごとに示した図。縦軸はスケールを示し、上ほど小さなスケールに対応する。太陽から約0.1au(約1500万km)の位置では約10Hz付近が、流体として扱う描像と個々の粒子の運動に基づく描像の境界にあたる。この境界は周囲の環境に応じて変動する。(黄線)指数関数曲線の一例。磁気ヘリシティーに対応するスケールが指数関数的に増大する様子を示す。(赤と青の二重構造)スケールによって磁気ヘリシティーの符号が異なること、つまり正負の磁気ヘリシティーが共存する「バイヘリカル構造」であることを意味する(提供:M. Iizawa et al.)

「この研究成果は、プラズマ物理学と天体物理学の両方にとって極めて重要な意味を持ちます」(横井さん)。

今回のような研究を通じてプラズマ乱流輸送の基礎理論が発展することで、宇宙天気の予測精度向上や、核融合炉におけるプラズマ安定化技術に貢献することが期待される。

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