北日本で近年見られた低緯度オーロラは太陽風密度が高かった
【2026年5月28日 北海道大学】
近年は太陽活動が活発な時期にあたり、こうした時期には、通常ではオーロラが見られないような緯度(磁気緯度)の低い日本のような地域でも「低緯度オーロラ」が観測されることがある。太陽風によって地球で磁気嵐が生じると低緯度オーロラが見られる可能性が高くなるが、2024年から2025年にかけて北日本で見られた5回の低緯度オーロラでは磁気嵐の規模は大きくなく、オーロラの成因がわかっていなかった。
北海道大学の中山智博さんは市民科学者の一人として、2021年11月から北大天文同好会のメンバーと共に北海道の各地で低緯度オーロラの観測・撮影を継続し、写真データを収集してきた。こうした経験をもとに、中山さんと沖縄科学技術大学院大学の片岡龍峰さんは低緯度オーロラ出現時にX上で観測を呼びかけ、北海道・東北の広範囲から市民が撮影したオーロラ写真を収集した。

2024年8月4日の低緯度オーロラ。(a)観測地点、(b)~(d)各地点での撮影画像。画像クリックで表示拡大(提供:(b)田村幸基さん、(c)嘉藤哲志さん、(d)植松薫さん)
中山さんたちはこれらの写真とオーロラの低緯度側への広がりをとらえた衛星観測データとを組み合わせて、オーロラの発光高度を推定した。すると、5事例の全てで発光高度が500~800kmに達していたことが明らかになった。通常の赤いオーロラの発光高度である約200kmと比べるとはるかに高高度であり、その「背の高さ」が北日本の広範囲で低緯度オーロラが観測された要因の一つと考えられる。

オーロラの高度推定。衛星データによるオーロラの低緯度側の境界の磁力線に対し、写真中の星の位置から推定したオーロラの仰角を投影し、高度のグリッドを写真に重ねることでオーロラの発光高度を可視化した。画像クリックで表示拡大(提供:プレスリリース、(b)田村さん)
また、太陽風や地球磁気圏に関するデータから、5事例の全てで太陽風の密度が通常時の約10倍にまで高くなっていたことも明らかになった。高密度の太陽風によって磁気圏が強く圧縮されたことにより、磁気圏内のプラズマが流出し、磁気嵐の規模が見かけ上で小さくなってしまったという。オーロラが観測されなかった際の磁気嵐のデータでは、太陽風の密度が小さかったことも確認された。
高密度の太陽風とそれに伴う強い磁気圏の圧縮が起こると低緯度オーロラが見られる可能性が高くなることが示された一方で、これらの条件時になぜ高高度オーロラが発生するのかという具体的な物理プロセスは未解明だ。今後さらに事例数を蓄積することで、現象の理解がさらに進むだろう。そのなかで、即応性や観測点の多さという点で「市民科学観測網」は非常に重要であり、今後の研究でも大きな貢献が期待される。
〈参照〉
- 北海道大学:規模が大きくない磁気嵐の際の低緯度オーロラの発生要因~継続的・高密度の市民科学観測網による低緯度オーロラの発生要因の解明に期待~
- Journal of Space Weather and Space Climate:Faint red auroras as seen from Japan associated with intense magnetospheric compression 論文
〈関連リンク〉
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