ブラックホール周辺の衝撃波による粒子加速を解明

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大規模シミュレーションによる研究から、超大質量ブラックホール周辺の衝撃波で陽子が効率的に加速され、近傍の活動銀河から観測されているニュートリノを説明し得ることが示された。

【2026年8月3日 大阪大学

ニュートリノはほとんど物質と相互作用せず宇宙を直進する粒子で、宇宙の極限環境を探る重要な手がかりとなる。岐阜県の観測施設「スーパーカミオカンデ」や南極点に設置されている検出器「IceCube」などで観測研究が進められている。

近年、IceCubeによって近傍のセイファート銀河から高エネルギーニュートリノが検出されている。従来の理論では、ニュートリノが生成される場合は同時にガンマ線も観測されると予測されているが、実際にはガンマ線が不足していて、この矛盾が未解決の問題となっていた。

M77
高エネルギーニュートリノが検出された近傍のセイファート銀河の一つ、くじら座のM77。距離約5000万光年(撮影:佐々木一男さん

この問題を説明する有力な候補として、活動銀河の中心にある超大質量ブラックホールの周辺に広がる「コロナ」と呼ばれる高温プラズマ領域(ブラックホールコロナ)が注目されている。この領域ではガンマ線は吸収され、一方でニュートリノは外部へ逃げることができる。しかし、この領域内部でニュートリノの元となる高エネルギー粒子がどのように加速されるのかは、これまで明確にはわかっていなかった。

大阪大学レーザー科学研究所のMinh Nhat Lyさんたちの研究チームは、プラズマ中の粒子と電磁場の振る舞いを直接計算する最先端のシミュレーション手法を用いて、ブラックホールコロナ内の衝撃波でどのように粒子が加速されるのかを詳細に解析した。

その結果、粒子が衝撃波を繰り返し往復することでエネルギーを増加させることや、衝撃波のエネルギーの約10%が高エネルギー粒子に変換されること、弱い衝撃波でもこの加速過程が効率よく働くことが明らかになった。さらに、この過程で生成される粒子のエネルギーが数十~数百テラ電子ボルトに達し、観測されているニュートリノを説明し得ることも示された。

超大質量ブラックホール周辺の衝撃波による粒子加速とニュートリノ生成の模式図
超大質量ブラックホール周辺の衝撃波による粒子加速とニュートリノ生成の模式図。超大質量ブラックホール周囲の高温プラズマ(コロナ)で、ガスの流れにより衝撃波が形成される。この衝撃波の中で粒子が繰り返し往復することでエネルギーが増加し、高エネルギー粒子となる。高エネルギー粒子は周囲の物質や光と相互作用してニュートリノを生成する。ニュートリノは外部へ放出される一方で、ガンマ線はコロナ内で吸収されると考えられる(提供:大阪大学リリース)

今回の成果は、超大質量ブラックホール周辺での粒子加速の仕組みを定量的に示し、高エネルギーニュートリノの起源という宇宙物理学の重要課題に新たな解釈を提供した。ブラックホール近傍の極限環境における物理過程の理解を前進させるものだ。また、観測と理論に加えて第一原理シミュレーションの重要性を示すものでもある。

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