スーパーカミオカンデが超新星背景ニュートリノの兆候をとらえた

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「スーパーカミオカンデ」の18年分のデータ解析から、過去の宇宙で起こった超新星爆発のニュートリノが地球に届いている兆候が初めて得られた。

【2026年6月29日 東京大学宇宙線研究所

太陽質量の約8倍を超える大質量星は、一生の終わりに重力崩壊型超新星(II型超新星)となって爆発し、中性子星かブラックホールを残す。このタイプの超新星爆発では大量のニュートリノが宇宙に放出される。

1つの銀河で超新星爆発が起こるのは約100年に一度だが、宇宙には膨大な数の銀河が存在するので、地球から宇宙を見ると、あらゆる時代の銀河で発生した超新星ニュートリノが足し合わされて、全方向からたえず届いているはずだ。これを「超新星背景ニュートリノ」という。

超新星背景ニュートリノ
超新星背景ニュートリノの概念図。ビッグバン以降の全ての時代で起こる超新星爆発を合計すると、地球から見て毎秒数回の割合で超新星が発生し、ニュートリノが届いている(提供:東京大学宇宙線研究所リリース、以下同)

だが、遠い宇宙から届くニュートリノは広く拡散してしまうので、実際に超新星背景ニュートリノが検出された例はまだない。たとえば、日本のニュートリノ検出装置「スーパーカミオカンデ」では、太陽の核融合で作られる「太陽ニュートリノ」や、宇宙線が大気の原子と衝突してできる「大気ニュートリノ」が毎日10~20個検出されているが、超新星背景ニュートリノの信号は年間数個しかないと考えられ、これまでは他の信号と区別できずに埋もれていたと推定されている。

もし超新星背景ニュートリノをとらえることができれば、宇宙の時代ごとに恒星がどのくらい作られ、元素がどのように生み出されたかという歴史を定量的に解明することにもつながる。

そこでスーパーカミオカンデでは、超新星背景ニュートリノの感度を上げる改修が2018年から行われた。スーパーカミオカンデは地下1000mに約5万トンの超純水タンクを置き、水とニュートリノの相互作用で出る「チェレンコフ光」を検出するものだが、改修によって超純水にガドリニウムという元素を添加した「SK-Gd実験」にアップグレードされている。

SK-Gd実験
SK-Gd実験で超新星背景ニュートリノが検出される様子を描いたイラスト。超新星背景ニュートリノのうち、反電子ニュートリノという成分が水中の水素原子(陽子)と衝突し、陽電子と中性子に変わる。陽電子はチェレンコフ光を出す。中性子は水中のガドリニウム原子に吸収され、ガンマ線が出る。このガンマ線もチェレンコフ光を出す。画像クリックで表示拡大

超新星背景ニュートリノは、水分子の水素原子(陽子)と衝突して陽電子と中性子に変える特徴がある。水中にガドリニウムを溶かしておくと、ガドリニウム原子がこの中性子を吸収してガンマ線を出すため、陽電子とガンマ線によってチェレンコフ光が2回発生する。よって、チェレンコフ光が立て続けに2回出る事象があれば、太陽ニュートリノや大気ニュートリノではなく超新星背景ニュートリノの可能性が高い、と判別できるのだ。

東京大学宇宙線研究所の関谷洋之さんを中心とする研究チームは、スーパーカミオカンデを純水で運転していた2008~2020年とガドリニウムを導入した2020年以降のデータを合わせた計5000日分の観測データを解析し、超新星背景ニュートリノの信号を探した。

その結果、ニュートリノのエネルギーが13.3~81.3MeVの範囲で、大気ニュートリノなどの背景事象だけでは説明できない信号が統計的に有意なレベルで存在する兆候をとらえた。

解析結果
今回の解析で得られた超新星背景ニュートリノの候補事象の数。横軸がニュートリノのエネルギー、縦軸が個数を表す。赤の領域が超新星背景ニュートリノと判定された成分、灰色の領域が背景事象を表す

この信号が超新星背景ニュートリノによるものだと仮定して、地球に降り注ぐ数を計算すると、1cm2当たり毎秒約3.6 +1.6/-1.5 個となり、理論モデルの予言値とも矛盾しないという。ただし、信号の有意性は2.6σ(=偶然である確率が約0.46%)であり、物理学で「発見」や「検出」と見なされる5σ(=偶然である確率が約0.0000286%)以上のレベルにはまだ達していない。

今回の成果は、超新星背景ニュートリノの存在を実験で示唆した初めてのものだ。研究チームでは、今後もデータの蓄積を進めて確定的な「検出」を目指すとしている。

「超新星背景ニュートリノの兆候を世界で初めてとらえたことは、スーパーカミオカンデ計画開始時からの悲願であり、大変意義深い成果です。ただし、現時点では2.6σの統計的有意性であり、確定的な検出には、さらなるデータ蓄積および解析の改善が不可欠です。今後もスーパーカミオカンデでの観測を継続し、確定的な検出へとつなげていく所存です。本結果が、宇宙の星形成史や元素合成、さらには中性子星・ブラックホールの形成過程の解明につながることを期待しています」(関谷さん)。

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