ふたご群の母天体ファエトンによる恒星食、観測大成功!
【2021年10月8日 星ナビ編集部】
10月4日2時3分ごろ、三重県熊野地方から島根県西部にかけてのわずか幅5kmの線上で、小惑星(3200)ファエトン(以下Phaethon)による恒星(12.0等)の食が起こり、この現象に対して少なくとも15地点で食による減光が観測された。概ね天候にも恵まれ、プロとアマチュアの合同による大規模な観測隊(リーダー:吉田二美氏(産業医科大学))は、小惑星の素顔に迫る重要な成果を得ることができた。
Phaethonは、ふたご座流星群の母天体としても知られる活動的な小惑星だ。このPhaethonによる恒星食観測は、JAXAと千葉工業大学による探査ミッションDESTINY+(サイエンスチームリーダー:荒井朋子氏)のために計画されたもので、探査機の打ち上げ前にPhaethonの大きさを求めることが最大の目的だ。これまでも、レーダーや赤外線による観測からある程度のサイズは求められていたのだが、さらに正確に追い込む必要があった。2年前(2019年8月)にも、恒星食帯上の函館で31名15地点もの観測隊が編成されたが、無情にも天候に泣かされた。
10月4日未明の現象では、Phaethonが、ぎょしゃ座の12等星(UCAC4 646-021974)を掩蔽した。減光は最長でもわずか0.6秒と予想され、これを30ミリ秒という高速シャッターでビデオ撮影するという、星食に慣れた観測者にとっても困難な現象だった。そこで今回、コロナ禍のこの2年で急速に普及したリモート会議を活用し、恒星食帯を横断するように、また天候リスクを軽減するために地区を分散した29地点による布陣を構築した。こうして迎えた観測において、15地点で減光、8地点で通過を記録する(10月7日現在)という大成功を収めた。今なお成果は寄せられつつあり、予想を大きく超える歴史的成果になることは確実だ(詳しくは星ナビ12月号にて紹介)。
〈関連リンク〉
- DESTINY+:
- HAL星研 小惑星による恒星食の観測成果のまとめや予報(早水勉さん)
- アストロアーツ 天文ニュース:
- アストロアーツ 天体写真ギャラリー:小惑星ファエトン(2017年)
- 星ナビ.com:
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