探査機「ルーシー」、2つ目の小惑星をフライバイ

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小惑星探査機「ルーシー」が4月20日、2つ目の目標天体である小惑星「ドナルドジョハンソン」をフライバイして画像やデータを取得した。2つの天体が衝突したような形状の同小惑星には、奇妙なくびれも見られる。

【2025年4月23日 NASA

複数の小惑星を探査するNASAの探査機「ルーシー」が4月20日に、2つ目の目標天体である小惑星「ドナルドジョハンソン」((52246) Donaldjohanson)に約1000kmまでフライバイ(接近飛行)し、画像などを取得した。

探査機の名前はエチオピアで発見された有名な化石人骨「ルーシー」に由来しており、小惑星名はその化石の発見者の一人であるアメリカの古人類学者ドナルド・ジョハンソンに因んで命名されたものだ。

ドナルドジョハンソン
約1100kmの距離から撮影されたドナルドジョハンソン(提供:NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL/NOIRLab)

これまでの地上からの観測で、ドナルドジョハンソンは10日周期で明るさが大きく変化することがわかっていて、この小惑星が特異な細長い天体であることが示唆されていた。そのため、ルーシーが撮影した、小さな2つの天体が衝突したような細長い小惑星の姿は予想通りだった。画像の簡易分析によると、ドナルドジョハンソンは最も広いところで長さ約8km、幅約3.5kmと推定されている。最初の高解像度画像では小惑星全体は見えておらず、その全貌は今後のデータ送信によって明らかにされる。

一方で、奇妙な細いくびれは予想外でミッションチームを驚かせた。「ドナルドジョハンソンの驚くほど複雑な構造を詳しく研究すれば、太陽系の惑星を作る素となった構成要素や衝突プロセスに関する重要な情報が明らかになるでしょう」(米・サウスウエスト研究所 ルーシー主任研究員 Hal Levisonさん)。

ドナルドジョハンソン
ルーシーの長距離カメラ「L'LORRI」がとらえた画像から作成されたドナルドジョハンソンのタイムラプス動画。小惑星はゆっくり自転しているが、この動画の回転はルーシーのフライバイによる見かけ上のもの(提供:NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL)

ルーシーは今年いっぱいは火星と木星の軌道の間にある小惑星帯を飛行し、2027年8月にミッションの主たる探査目標である木星のトロヤ群小惑星に到達する予定となっている。ルーシーが2023年にフライバイした小惑星「ディンキネシュ」((152830) Dinkinesh)と今回のドナルドジョハンソンはともにミッションのメインターゲットではないが、観測機器の動作確認や探査のリハーサルなどのために訪問されたものだ。「ルーシーは今回のフライバイの初期画像で、驚異的な能力を示しました。トロヤ群小惑星到着後には、太陽系の歴史の理解につながる新たな道を切り開いてくれることでしょう」(ルーシーミッション プログラムサイエンティスト Tom Statlerさん)。

ドナルドジョハンソンをフライバイするルーシーの想像図
ドナルドジョハンソンをフライバイするルーシーの想像図(提供:NASA/GSFC

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