リュウグウ試料で太陽系最古の岩石の年代測定に成功

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小惑星リュウグウの試料に含まれる太陽系最古の鉱物「CAI」の年代が初めて測定され、45億6730万年前にこの鉱物ができたことがわかった。

【2025年7月25日 北海道大学

探査機「はやぶさ2」が持ち帰った試料の初期分析から、小惑星リュウグウは主に40℃くらいの水溶液中でできた鉱物が主成分で、鉱物の形成時期は約45億6200万年前であることがわかっている。ただし、これらの鉱物はリュウグウ内部の水溶液によって二次的に変質したものであり、元々のリュウグウの材料物質がいつできたのかはわかっていなかった。

リュウグウ試料からは、「CAI」というカルシウム・アルミニウムに富む鉱物も見つかっている(参照:リュウグウ粒子から炭酸・塩が溶け込んだ水を発見 / リュウグウの始原的物質は太陽系で最初期にできたものかも)。CAIは初期太陽系内部の1000℃以上の場所で作られる物質で、太陽系で最初にできた固体物質と考えられている。しかし、リュウグウ試料のCAIはきわめて微量で、これまで年代測定は行われていなかった。

原始太陽系円盤の想像図
原始星を取り巻く円盤の想像図。約46億年前、原始太陽の周りにもこのようなガス・塵の円盤が形成されたと考えられている。円盤内部の塵がのちに微惑星の材料となった(提供:NASA/JPL-Caltech

北海道大学の川﨑教行さんたちの研究チームは、走査型電子顕微鏡でリュウグウ試料の形状観察や化学組成の分析を行い、試料の中から年代測定ができそうなCAIを発見した。詳しい観察の結果、このCAIは水溶液から生成した鉱物と混ざり合っていて、確かにリュウグウの材料物質の生き残りであることが判明した。

リュウグウ試料とCAI
今回分析したリュウグウ試料と、そこに含まれていたCAIの電子顕微鏡画像。赤がマグネシウム、緑がカルシウム、、青がアルミニウムの存在する場所を示す(提供:Kawasaki et al. 2025

川崎さんたちは同位体顕微鏡(二次イオン質量分析計)を使い、Al-Mg放射年代測定法でこのCAIの年代を測定した。その結果、太陽系誕生直後の約45億6730万年(±20万年)前に形成されたものであることがわかった。二次的な変質を受けていない、元々のリュウグウの材料物質で年代が判明したのはこれが世界初だ。

今回の発見により、太陽系の誕生直後に作られた高温物質がリュウグウに取り込まれていることが示された。

川崎さんたちはリュウグウ試料と性質が似ている「イブナ型炭素質隕石」でもCAIを探したが、どちらの試料でも、見つかったCAIは直径0.1mm以下と非常に小さく、他の炭素質隕石によく見られるような大きなCAIは含まれないことが判明した。

この違いは、初期の太陽系の中で固体物質が運ばれたメカニズムに関係しているようだ。原始太陽系円盤では、原始木星が誕生したことで、局所的に圧力が高い「圧力バンプ」という構造ができ、固体物質の運搬がせき止められたと考えられている。リュウグウの材料物質には大粒のCAIが含まれないことから、リュウグウの母天体は圧力バンプからかなり離れた太陽系の遠方で誕生した、珍しい天体だと研究チームでは考えている。このシナリオは、リュウグウ試料の同位体組成の分析などともつじつまが合うものだ。

研究チームでは、NASAの「オシリス・レックス」が持ち帰った炭素質小惑星「ベンヌ」の試料もすでに観察・分析を進めていて、今後リュウグウとベンヌの関連についても解明が進むと期待される。

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