木星のトロヤ群に彗星を初めて発見

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2019年6月に木星のトロヤ群にある天体として発見された「2019 LD2」は、彗星であることがわかった。木星のトロヤ群の天体が彗星として確認されたのは初めてとなる。

【2020年5月27日 ハワイ大学マノア校 6月1日更新

6月1日更新

その後の解析により、この天体は実際には木星のトロヤ群の天体ではないことが判明しました。→ 「トロヤ群彗星ではなかったP/2019 LD2」


(以下は5月27日に公開した内容です)

このところ小惑星と彗星の境界は曖昧になってきており、はっきりと区別することができない天体の発見が増えてきている。発見当初は小惑星のように見えていたものの、後に尾やコマといった彗星のような特徴を見せる「活動的小惑星」や、反対に最初は彗星活動をしていたものの活動を見せなくなった「枯渇彗星」といった天体だ。

2019年6月初め、米・ハワイの全天観測プロジェクト「ATLAS(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)」が木星の軌道近くに小惑星を発見した。この小惑星は新天体と認定され、「2019 LD2」という符号が付けられた。ATLASは地球に接近・衝突する可能性がある危険な天体をいち早く観測するためのシステムだ。2台の望遠鏡で2夜ごとにほぼ全天をカバーするように観測しており、地球に接近しないような小惑星や彗星(たとえばアトラス彗星(C/2019 Y4)など)もしばしば発見している。

英・クイーンズ大学のAlan Fitzsimmonsさんたちが、2019年6月10日にATLASで撮影された画像を調べたところ、2019 LD2が彗星活動をしていることが明らかになった。6月11日、13日にはハワイ大学のJ. D. Armstrongさんたちがラスクンブレス天文台グローバル望遠鏡(LCOGT)での追観測を行い、やはり2019 LD2が彗星活動していることを確認した。

LCOGTで観測された2019 LD2
2019年6月11日にLCOGTの拠点の一つであるチリ・セロトロロ汎米天文台で観測された2019 LD2(赤い円の中)(提供:J. D. Armstrong/IfA/LCOGT)

2019年7月にATLASが再び2019 LD2を撮影したところ、ダストやガスで形成された彗星のような尾が確認された。その後、2019 LD2は地球から見て太陽の後ろを通過し、2019年後半から2020年初めには観測できなかったが、2020年4月に再び観測したところ、やはり2019 LD2に彗星活動が見られた。つまり、2019 LD2はほぼ1年間にわたって彗星活動を継続しているということになる。

ATLASで観測された2019 LD2
2019年6月下旬にATLASで観測された2019 LD2(中央の2本の赤い線で挟まれた像)。左の画像では背景の星に埋もれているため、同じ画像で背景の星を削除したものが右の画像。彗星活動の様子がかすかにわかる(提供:ATLAS/A. Heinze/IfA )

2019 LD2は、木星のトロヤ群と呼ばれるグループに属する天体である。木星のトロヤ群は、木星の軌道上で木星に60度先行する小惑星の群と、木星を60度後ろから追いかける小惑星の群の二群をなしていて、2019 LD2は先行する群に含まれている。これまでに多数の木星トロヤ群小惑星が発見されているが、そのなかで彗星活動が見つかったのは、今回の2019 LD2が初めてだ。

トロヤ群の天体は数十億年前に、木星の強い重力によって木星軌道に乗ったと考えられている。その表面に氷があれば、ずっと昔に蒸発してガスやダストを放出したはずだ。2019 LD2はもともと、氷が融けないような木星より遠い軌道にあった天体だったのが、最近になって木星に捕捉されたのかもしれない。その後に地すべりや他の小惑星との衝突によって地下の氷が表出し、突然彗星活動を見せるようになった可能性がある。

「数十年もの間トロヤ群の小惑星の表面の下には大量の氷があるはずだと信じていましたが、今まで証拠がありませんでした。2019 LD2はそのような性質の予測が正しい可能性があることを示しています」(Fitzsimmonsさん)。