トロヤ群彗星ではなかったP/2019 LD2

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木星の前後に軌道を持つトロヤ群の小惑星として発見され、のちに彗星として再分類された「P/2019 LD2」の軌道を調べたところ、一時的に木星周囲の軌道に閉じ込められているだけの「よそ者」であることがわかった。

【2020年6月1日 ハワイ大学

2019年6月初め、米・ハワイの全天観測プロジェクト「ATLAS(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)」によって木星に60度先行する軌道を持つ小惑星の一群「トロヤ群」の一つとして発見された天体「2019 LD2」は、その後彗星活動を示していることがわかった。「P/2019 LD2」として再分類されたこの天体(アトラス彗星)は、木星トロヤ群で見つかった最初の彗星であるかに思われた(参照:「木星のトロヤ群に彗星を初めて発見」)。

ATLASで発見されたP/2019 LD2
2019年6月にATLASで発見されたP/2019 LD2(中央の2本の赤い線で挟まれた像)(提供:ATLAS/A. Heinze/IfA)

しかし精査したところ、この天体の軌道は木星のトロヤ群の軌道と交わっていただけであり、P/2019 LD2は実際には「木星族彗星」であることが判明した。木星のトロヤ群にある彗星ではなかったものの、木星の強い重力が大きな影響を与えていることには変わりはない。

本当の木星のトロヤ群に属する小惑星は木星の軌道とほぼ同じ軌道を描いており、木星の前後に群れをなしている。そして太陽と木星の微妙な重力のバランスによって群れが保たれている。一方、典型的な木星族彗星は木星に影響を受けつつも、土星の外側から地球周辺までを行ったり来たりする細長い軌道を通ることが多い。

現在のP/2019 LD2の位置と軌道は木星のトロヤ群の円に近い軌道とほとんど一致しているが、安定したものではない。P/2019 LD2は数十年ごとに定期的に木星と接近するため、木星の重力によって軌道が大きく変化してしまい、数十年後には木星のトロヤ群の小惑星と間違われることはなくなるだろう。

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