探査機ロゼッタ、彗星に大量の酸素分子を検出

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チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を観測中の探査機「ロゼッタ」が、彗星から放出される大量の酸素分子を検出した。驚くべきこの観測結果は彗星形成時に酸素が取り込まれたことを示唆しており、太陽系形成論に影響を与える可能性もある。

【2015年11月2日 ヨーロッパ宇宙機関

ヨーロッパ宇宙機関の探査機「ロゼッタ」は、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を過去1年にわたり観測し続けている。その観測から、水蒸気や一酸化炭素、二酸化炭素、さらに窒素や硫黄、希ガスなどが彗星の核から吹き出す様子が記録されている。

10月18日に撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
10月18日に433kmの距離から撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(提供:ESA/Rosetta/NavCam - CC BY-SA IGO 3.0)

研究チームでは酸素分子の存在を確認するため、昨年9月から半年間で彗星の周りから集めたサンプルを分析した。その結果、水に対して1~10%、平均約3.80%の酸素が検出された。これはモデルの予測より1桁多い、驚きの結果だ。検出された酸素分子の量は水の量と深い関係を示しており、その起源と放出メカニズムが関係していることを示唆している。また、半年間で彗星とロゼッタは太陽へと近づいていったが、酸素と水の割合は一定であった。

酸素は宇宙で3番目に多い物質で、水やオゾンという形では様々な天体で検出されているのだが、気体の酸素分子は反応性が高く壊れやすいため、気体の形で存在をとらえることは難しい。「彗星でこれほど多くの酸素分子を検出するとは、本当に予想外で驚きました。彗星形成時に取り込まれたはずなのですが、現在の太陽系形成モデルでは、それを簡単に説明することができないのです」(スイス・ベルン大学 Kathrin Altweggさん)。

硫黄(S)やメタノール(CH3OH)と比較した酸素の計測結果
硫黄(S)やメタノール(CH3OH)と比較した酸素(O2)の計測結果。異なる色の線は別々の日の観測に対応している。クリックで拡大(提供:A. Bieler et al. (2015))

酸素分子は、太陽系が原始星雲だった初期の段階に水の氷に取り込まれて、その後化学的変化を起こさずに存在し続けたのかもしれない。あるいは、凍った塵の粒子の放射線分解が彗星の成長前に起こり、水素が拡散して酸素が水にならずに残ったという説もある。「酸素分子がどのようにして形成されたのかはともかく、更なる化学反応によって破壊されるのを免れるように守られていたということです」(Kathrinさん)。

「彗星研究分野内外における驚くべき結果です。太陽系形成モデルへの影響もあるかもしれません」(ヨーロッパ宇宙機関 Matt Taylorさん)。

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