地球外生命の指標として不適格か、赤ちゃん星にもクロロメタンが存在

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赤ちゃん星の連星系という星間空間で、有機ハロゲン化合物「クロロメタン」が初めて発見された。この物質はチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星でも発見されており、生命が存在しない環境でも自然に作られて長く存在し続けるようだ。

【2017年10月11日 アルマ望遠鏡NRAOESA

へびつかい座の方向およそ400光年の距離にある、生まれて100万年程度の赤ちゃん星の原始連星系「IRAS 16293-2422」の周囲には、星の材料になるガスや塵が多く残されている。そこには非常に多様な分子が存在しており、これまでのアルマ望遠鏡の観測で、最も単純な糖類分子であるグリコールアルデヒド(C2H4O2)やアミノ酸の材料となるイソシアン酸メチル(CH3NCO)が発見されている。

アルマ望遠鏡による最新観測から、この領域に有機ハロゲン化合物の一種である「クロロメタン(CH3Cl)」が発見された。この物質はヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機「ロゼッタ」によってチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)でも発見されているが、星間空間での発見は今回が初めてのことになる。地球では人間が工業的に作り出しているほか、微生物が生命活動の一環として作り出している物質であり、宇宙にもこの分子が多く存在することが今回の発見で明らかになった。

星形成領域とクロロメタンの分子構造の模式図
NASAの赤外線天文衛星「WISE」が観測したへびつかい座の星形成領域。画像左寄りに原始連星系「IRAS 16293-2422」が存在する。枠内はクロロメタンの分子構造の模式図(提供:B. Saxton (NRAO/AUI/NSF); NASA/JPL-Caltech/UCLA)

「これほど若い星の周りで有機ハロゲン化合物が見つかるとは予想外でした。しかも、大量に見つかったのです。星が生まれる場所でこうした分子が簡単に大量にできると初めてわかったことは、太陽系や他の惑星系の化学的進化を読み解くうえで重要な発見です」(米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センター Edith Fayolleさん)。

アルマ望遠鏡とロゼッタの観測結果は、生命が存在しない赤ちゃん星や彗星の周りで自然にクロロメタンが作られ、その後じゅうぶん長期にわたって壊れずに存在し続けることを示している。つまり、もし今後の観測で系外惑星の大気中にクロロメタンが見つかったとしても、それが必ずしも生命活動の証拠とは言えないことになる。クロロメタンを生命存在のサインと考えていた宇宙生命の研究者にとっては、少々残念な発見かもしれない。

今回の研究で特筆すべきことは、原始連星系の周りと彗星とでクロロメタンの存在比率がほぼ同じだったという点だ。「彗星は太陽系誕生時に惑星になりきれなかった残り物であり、昔の化学的特徴を保持している」という、広く支持されている考えと一致する結果である。「しかし、また新たな疑問が浮かんできます。彗星で見つかる有機物のうちのどれくらいの割合が、星が生まれた時代からずっと残っているものなのでしょうか。他の赤ちゃん星や彗星で有機ハロゲン化合物を探すことで、この謎の答えを得ることができるでしょう」(Fayolleさん)。

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