ロゼッタ、彗星に衝突しミッション終了

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2年以上にわたって彗星の周回探査を続けてきた探査機「ロゼッタ」の歴史的なミッションが9月30日、探査機を彗星に衝突させて終了した。

【2016年10月3日 ESA

ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機「ロゼッタ」は、9月30日の午前5時50分(日本時間、以下同)に最後のエンジン噴射を行い、彗星の上空約19kmから彗星への衝突ルートに入った。ロゼッタが衝突目標地点としたのは、彗星の「Ma'at」と呼ばれる領域にある活動の活発なくぼみのある地点付近だ。

そして午後8時19分、信号の停止が確認され、ロゼッタのミッションが終了した。

ロゼッタとフィラエの着陸地点
ロゼッタの衝突着陸地点(右囲み)と、フィラエの着陸地点(左囲みは1回目、中央下はバウンド後)。クリックで拡大(提供:CIVA: ESA/Rosetta/Philae/CIVA; NAVCAM: ESA/Rosetta/NAVCAM – CC BY-SA IGO 3.0; OSIRIS: ESA/Rosetta/MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA; ROLIS: ESA/Rosetta/Philae/ROLIS/DLR)

最後のミッションであった彗星への降下は、高解像度の画像撮影だけでなく、彗星の表面近くに存在するガスや塵などを調べるチャンスでもあった。取得されたデータは、彗星衝突の前に地球へ送信されている。

衝突間際のロゼッタによる最後の画像
衝突間際のロゼッタが彗星上空20m付近からとらえた最後の画像。1ピクセル当たり2mmという超高解像だ(提供:ESA/Rosetta/MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA)

2004年の打ち上げ以来、ロゼッタは太陽の周りを6周し、延べ航行距離は80億kmに及ぶ。その間に地球フライバイを3回、火星フライバイを1回行い、2つの小惑星にも接近した。2011年6月から31か月間の冬眠状態に入った後2014年1月に目覚め、同年8月に探査目標のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)に到着した。

彗星を周回する初の探査機となったロゼッタは、彗星が太陽に接近するにつれて変化する様子を調べ続けた。また2014年11月には着陸機「フィラエ」を投下、フィラエは彗星に着陸した初の探査機となった。

ロゼッタの探査により、アヒルのような不思議な彗星の形は、2つの部分が独立に形成された後でゆっくりと衝突してできあがったと考えられている。長期にわたる観測からは、彗星の季節変化や表面の塵の移動、コマの密度や組成の変化に彗星の形状が重要であることもわかった。また、彗星の核から流れ出るガスに酸素や窒素などの分子が見つかったことや、地球の海水とは異なった特徴の水が発見されたことも予想外の大きな成果だ。

これらのことから、彗星は45億以上前の太陽系が形成中だったころに原始惑星状星雲中の非常に冷たい領域で誕生したことが示された。

地球の水は従来考えられていたほどの量が彗星で運ばれてきたというわけではなさそうだとしても、一方で生命を作る元となる必須物質が彗星によって運ばれてきたのかどうかということも大きな疑問だ。ロゼッタは、アミノ酸の一種であるグリシンを検出するという期待を裏切らない成果をもたらしてくれた。他にも、フィラエと共に多くの有機化合物も検出している。

「ロゼッタストーンが歴史と古代の言語を理解する上で重要であることに因んで、探査機にその名前が付けられました。ロゼッタが取得したデータによる貴重な発見は、彗星と太陽系がどのようにして形成されたのかに関する私たちの見識を変えるものです。現時点で解決すべき新たな謎もありますが、すべての謎が出尽くしたわけでもありません。データアーカイブ中に、まだ隠れた驚くべき発見や謎が必ずあります。私たちはまだスタートラインにいるのです」(プロジェクトサイエンティスト Matt Taylorさん)。

ミッションにおける探査機の運用は終了したが、分析は今後何年にもわたって行われる。

動画「ロゼッタ物語:むかしむかし…」

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