超新星残骸の磁場を観測で決定、粒子加速の限界が明らかに

このエントリーをはてなブックマークに追加
超新星残骸RX J1713.7-3946の衝撃波上流の磁場の強さが、観測から初めて約10マイクロガウスと決定された。この磁場では現在、宇宙線の起源解明に重要なペタ電子ボルト級まで粒子を加速できないことがわかった。

【2026年10月21日 甲南大学】

宇宙を飛び交う高エネルギー粒子は「宇宙線」と呼ばれる。宇宙線の粒子が宇宙のどこでどのようにして高いエネルギーを得ているのかは完全には解明されていないが、有力な候補の一つとして、星が大爆発を起こした後に残される「超新星残骸」が考えられている。

超新星爆発で放出された物質が周囲の星間物質中を超音速で膨張すると、衝撃波が形成される。この衝撃波付近で、粒子が磁場による散乱を繰り返すことで少しずつエネルギーを獲得し、光に近い速度まで加速される「衝撃波統計加速」という機構によって、宇宙線が生成される、という考えだ。実際に超新星残骸の観測から、衝撃波で粒子加速が起こっている証拠が得られている。

超新星残骸SN 1006
超新星残骸SN 1006(擬似カラー合成画像)。衝撃波によって荷電粒子が高エネルギーまで加速されている証拠が得られている(提供:X-ray: NASA/CXC/Rutgers/G.Cassam-Chenai, J.Hughes et al.; Radio: NRAO/AUI/NSF/GBT/VLA/Dyer, Maddalena & Cornwell; Optical: Middlebury College/F.Winkler, NOAO/AURA/NSF/CTIO Schmidt & DSS)

このメカニズムで粒子がどの程度のエネルギーまで加速されるかは、衝撃波上流の磁場の強さに大きく左右される。しかし、磁場の強さを観測から決定することはこれまで困難だった。

甲南大学の川端裕也さんを中心とする研究チームは、さそり座の方向、約3000光年の距離にある超新星残骸「RX J1713.7-3946」(以下、RX J1713)に注目した。この天体は、西暦393年に出現したと中国の文献に記録されている「客星」との関連が指摘されているものだ。また、X線やガンマ線での観測から、この超新星残骸で粒子加速が起こっていることがわかっている。

研究チームがNASAのX線観測衛星「チャンドラ」の観測データを解析したところ、衝撃波の外側の領域に、周囲よりもX線で明るく輝く「ホットスポット」が多数存在することがわかった。このホットスポットは、衝撃波で加速された陽子の一部が衝撃波の上流へ拡散し、そこにある濃いガスの塊との相互作用で生じた高エネルギー電子が放つシンクロトロン放射として説明できる。

超新星残骸RX J1713.7-3946
超新星残骸RX J1713.7-3946。(左)ヨーロッパ宇宙機関のX線宇宙望遠鏡「XMMニュートン」による超新星残骸の全体像、(右)チャンドラによる北西部のX線画像。チャンドラは角度分解能に優れ、多数のホットスポット(緑色の丸)を検出した。ホットスポットはマゼンタの破線で示した衝撃波よりも外側にも存在している。また、図にはないが、北西部と同様のホットスポットが南西部や南東部にも存在することがわかった(提供:甲南大学リリース、以下同)

ホットスポットの分布の情報を用いると、衝撃波上流で拡散した粒子がどこまで伝播しているかがわかる。粒子の伝播距離は磁場の強さに依存するため、得られた伝播距離から衝撃波上流の磁場の強さが約10マイクロガウスと求められた。

RX J1713の北西部ホットスポットの動径分布
RX J1713の北西部ホットスポットの動径分布(赤線)。緑色の点線は衝撃波の位置を表す。青色の点線で示した位置までホットスポットが分布しており、加速された粒子がこの位置まで拡散していることがわかる。黒色のデータ点は別の観測によるガンマ線の動径分布を示す。ガンマ線の動径分布は衝撃波上流でのホットスポットの分布と似ていて、ホットスポットの起源を解釈する上で重要な手がかりとなる

さらに、この磁場の強さから、超新星残骸RX J1713では現在、宇宙線の起源を考える上で重要なペタ電子ボルト(PeV、10の15乗電子ボルト)級のエネルギーまで粒子を加速できないことがわかった。

研究チームは今後、他の超新星残骸についても上流磁場を決定し、より若い超新星残骸ではPeVまで粒子を加速できる可能性などを探求して、宇宙線の起源についてさらに迫っていきたいと考えている。

関連記事