131億年前の宇宙に存在する銀河に酸素を検出、史上最古

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アルマ望遠鏡の観測で、131億年前の宇宙に存在する銀河に、電離した酸素ガスが初めて検出された。いまだ謎である宇宙再電離を探る重要な手がかりになると期待されている。

【2016年6月17日 アルマ望遠鏡

138億年前、ビッグバン直後の宇宙には、最も軽い元素である水素と2番目に軽いヘリウム(および3番目に軽いごく微量のリチウム)しか存在していなかった。酸素や炭素といったより重い元素は、星の内部での核融合反応によって作られ、超新星爆発などによって宇宙空間にばら撒かれて次世代の星の材料となる。

こうして星の生死が繰り返されると星の内部の重元素量が増えていくので、その量は星形成の歴史を反映するものとなる。とくに宇宙最初期の重元素を探すことは、宇宙で最初の星形成の歴史や銀河の誕生について調べることにつながる。

大阪産業大学の井上昭雄さんたちの研究チームは宇宙最初期の重元素を探すため、くじら座の方向にある銀河「SXDF-NB1006-2」をアルマ望遠鏡で観測した。この銀河は2012年に、すばる望遠鏡によって発見されたものだ。

研究チームでは電離した酸素に注目し、酸素からの光が検出可能であることをコンピュータシミュレーションで確認したうえで観測を行ったところ、銀河から酸素に由来する電波が検出された。今から約131億年前、宇宙誕生後およそ7億年という最初期の宇宙に酸素が存在していたことを証明する結果で、人類が目にする最古(すなわち最遠方)の酸素となる。

検出された電波は、強いエネルギーを受けて電子を2個失った状態の酸素からのものであることから、この銀河には太陽の数十倍の質量を持つ巨大な星が多数存在しており、強烈な光を放って酸素を電離していると考えられる。

SXDF-NB1006-2の想像図
SXDF-NB1006-2の想像図。巨大な若い星たちが放つ強烈な光によってガスが電離されている様子(提供:国立天文台)

観測された酸素の量はシミュレーションの予想どおりであったが、塵が少ない(塵からの電波が検出されない)という予想外の結果も得られた。また、炭素も検出できなかった。この結果は「宇宙再電離」を考えるうえで非常に重要な点だ。

宇宙再電離とは、宇宙の誕生から数億年後、宇宙に満ちていた水素原子が電離された現象のことで、天体からの光によって引き起こされたと考えられているが、それがどんな天体であるかははっきりとはわかっていない。今回の観測対象である銀河のように塵や炭素が少ないと、銀河中の巨大星から放たれた強烈な光が銀河の外にまで達し、広範囲のガスを電離させることになる。「SXDF-NB1006-2は、宇宙再電離を引き起こした光源のプロトタイプかもしれないのです」(井上さん)。

「今回の研究成果は、第一歩にすぎません。アルマ望遠鏡の高い解像度で観測すれば、銀河における電離酸素ガスの分布や運動の様子も見えるはずで、銀河の性質を議論する上で非常に役に立つ情報になります。どんな銀河が宇宙再電離を引き起こしたのか明らかにする重要な手がかりが得られるでしょう」(東京大学 田村陽一さん)。

※アストロアーツ注(6月20日):ニュース公開当初は「131億光年彼方」と表現しておりましたが、「131億年前」という表現に改めました。