酸素ガス放出で星形成が終わる、90億光年彼方の銀河

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【2013年12月11日 すばる望遠鏡

すばる望遠鏡の観測で、90億光年彼方の12個の銀河から広がる酸素ガスがとらえられた。こうした銀河ではガスの放出で星形成が終わりつつあると考えられ、銀河内での大質量ブラックホールや星形成活動の観測結果とあわせて、銀河の進化を理解する大きな手がかりとなる。


すばる望遠鏡がとらえた、12個の[OII]ブロブ銀河

すばる望遠鏡がとらえた、12個の[OII]ブロブ銀河。酸素イオンのガスが銀河からしみ(データを赤色で描写)のように広がっているのがわかる。その範囲は約10万光年から最大で25万光年にも及ぶ。クリックで拡大(提供:国立天文台、東京大学 (Suraphong YUMA))

東京大学宇宙線研究所のユマ・スラポン研究員と大内正己准教授の率いる国際研究チームが、酸素イオンのガスを広範囲に放出する12個の銀河を90億光年彼方に見つけた(画像)

こうした「[OII]ブロブ(オーツーブロブ:「酸素イオンのしみ」の意、IIは酸素(O)原子が電子を1つ失っている状態を表す)」は、活発に星を生み出していた銀河が星形成を終了し、銀河進化としての最終段階に入りつつあるようすを知る大きな手がかりとなる。今回の研究によると、成長した[OII]ブロブでは星形成が活発な同程度の重さの銀河に比べて作られる星の量が少なく、酸素ガスの放出で星形成が終わりつつあると考えられる。

酸素ガスは、銀河中心の巨大質量ブラックホールの活動や星形成による熱で飛び出す。すばる望遠鏡や超大型望遠鏡VLTでの分光観測から、大質量ブラックホールと星生成の両方によるガスの放出の痕跡が検出されている。

これらの銀河と同時代の星形成銀河の約3%がガス放出の段階にあると計算されており、銀河の形成・進化を理解するうえで重要な研究結果となった。