2兆4600億kmの間欠ジェットを吹き出す原始星

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アルマ望遠鏡による電波観測で、原始星からガスのジェットが矢継ぎ早に噴出しているようすがとらえられた。ジェットは驚くほど規則正しく噴出と休止を繰り返しており、放出されたガスは、2兆4600億kmもの距離にまで伸びている。

【2015年11月9日 アルマ望遠鏡

地球から約1400光年離れたへび座南星団は、米・カリフォルニアの電波望遠鏡「CARMA」によって発見された、数十の原始星からなる天体である。この星団内に最近、非常にはっきりとしたジェットが見つかった。

ジェットは原始星「CARMA-7」から噴出しているのだが、驚くほど規則正しく噴出と休止を繰り返している。その間隔はわずか100年程度だ。画像中、原始星から上方向に吹き出すジェットは私たちから離れる方向へ動き、下方向に吹き出すジェットは私たちに向かって動いていることが明らかになった。

また、アルマ望遠鏡での観測によりCARMA-7からはこれまでに22回のガス放出があったことがわかった。放出されたガスは2兆4600億km(0.26光年)という長い距離を進み、周囲の星団に大きな影響を与えるとともに他の原始星から噴き出したジェットと混ざり合う。へび座南領域のように多くの星が非常に狭い範囲で作られている場合、従来は原始星からのジェットとそれを取り巻くすぐ近くの別の原始星からのジェットは区別できなかったが、アルマ望遠鏡の強力な分解能によって混沌としたジェットも見分けることができる。

CARMA-7とその両極から噴き出すジェット
CARMA-7とその両極から噴き出すジェット。クリックで拡大(提供: B. Saxton (NRAO/AUI/NSF); A. Plunkett et al.; ALMA (NRAO/ESO/NAOJ))

「一般的に、この成長段階にある星はよりスムーズに安定して成長するのですが、CARMA-7はめざましい成長段階と比較的穏やかな段階を繰り返しているようです。この星のように断続的に進む成長は、数多くの原始星が密集した領域における混沌とした相互作用を探るうえで、重要な手がかりとなります」(米・イエール大学 Adele Plunkettさん)。

アルマによるきわめて明瞭なジェットの観測から、原始星を取り巻く降着円盤の環境に新たな知見を得ることができるかもしれない。周囲を塵やガスに覆われているため物質降着の過程を直接見ることはできないが、そこから飛び出すジェットの観測によって、間接的にその過程を知ることができるのである。

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