初期宇宙の怪物銀河は多様なしくみで爆発的に星を生む

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初期宇宙にある3個の「モンスター銀河」が、それぞれ異なるしくみで活発な星形成を起こしている様子がとらえられた。巨大銀河の成長には複数のしくみが関わるようだ。

【2026年1月16日 アルマ望遠鏡

およそ100億~120億年前(赤方偏移z=2~4)の初期宇宙に存在する「サブミリ波銀河(SMG)」は、「モンスター銀河」とも呼ばれ、現在の銀河団に存在する巨大楕円銀河の祖先と考えられている。サブミリ波銀河では天の川銀河の約500倍ものペースで新たな星々が生まれ、超新星爆発で大量の塵が放出されている。可視光線や赤外線では暗いが、大量の若い星々に暖められた塵が遠赤外線やサブミリ波で明るく輝いている、特殊な銀河だ。

サブミリ波銀河は宇宙の誕生からわずか20億年ほどで成長したと考えられるが、この時代になぜこれほど激しい星形成が起こったのかは、長年にわたって銀河の形成・進化の謎となっていた。

サブミリ波銀河の激しい星形成は「自然発生的」なものだと最近まで考えられていた(参照:「124億光年彼方で暴走するモンスター銀河」)。つまり、「分子ガスが自らの重力で集まって新しい星が生まれる」という基本的な星形成の過程に何らかの理由でブレーキがかからず、星形成が急速に起こり続けているという考え方だ。

しかし、サブミリ波銀河は遠方の宇宙に存在するため、従来の観測では解像度が足りず、詳細を明らかにすることが難しかった。さらに、複数の波長で高解像度の観測を行って比較する研究も限られていて、どんな物理成分が星形成の起源になっているのか、直接確かめられていなかった。

総合研究大学院大学/国立天文台の池田遼太さんたちの研究チームは、ろくぶんぎ座の方向にある3つのサブミリ波銀河「AzTEC-1」(z=4.342)「AzTEC-4」(z=4.198)「AzTEC-8」(z=3.097)をジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とアルマ望遠鏡で詳細に観測した。

JWSTは近赤外線の波長で塵の影響を避けて恒星の分布をとらえることができ、アルマはサブミリ波を使って塵に隠された星形成の詳細をとらえられる。池田さんたちはこの2つの望遠鏡で、約0.06秒角(最大視力1000に相当)というきわめて高い解像度の観測を行った。

JWSTとアルマ望遠鏡で見たAzTEC-8のイメージ図
JWSTとアルマ望遠鏡で見たサブミリ波銀河「AzTEC-8」のイメージ。JWSTで見える恒星の分布と、アルマで見える星形成領域の分布という、異なる2成分を比べることで、モンスター銀河の「2つの顔」が浮かび上がる(提供:国立天文台、以下同)

この観測で得られたデータから、3つの銀河で起こっている星形成の起源を調べたところ、星形成と恒星の分布がいずれも3銀河で大きく異なっていることが初めて明らかになった。詳しい解析から、3つの銀河で起こった星形成は、以下のような過程で活発化したことが示された。

  • AzTEC-1:星形成は銀河全体に広がっているが、恒星の分布は銀河の中心に集中している。これは、大きな銀河同士の衝突によって、星形成の材料であるガスが合体後の銀河中心に流入しつつ銀河全体にも広がり、銀河中心で恒星が大量に形成されたことを示唆している。
    “銀河衝突”が星形成のスイッチとなった可能性が高い。
  • AzTEC-4:アルマ望遠鏡では2本の腕を持つ渦巻構造が見えるが、JWSTで得られた恒星の分布はのっぺりとした円盤状で、強い渦巻構造は見られない。こうした構造はAzTEC-1のような大規模な銀河の衝突では説明しにくい。
    → 銀河内部で分子ガスの重力不安定性によって“自然発生的”に星形成が進んでいる可能性を示唆している。
  • AzTEC-8:星形成は中心付近にコンパクトに集中している。恒星の分布は広範囲に広がり、星の巨大な集団が複数見られる。
    → 比較的“小さな銀河との衝突”が星形成の引き金となった可能性を示唆している。

3つのモンスター銀河の観測画像とイメージ図
(上)アルマ望遠鏡とJWSTのデータを合成した3個の銀河の画像。青色はアルマ望遠鏡がとらえた星形成領域、赤色はJWSTがとらえた恒星の分布を表す。(下)それぞれの銀河のイメージ図

今回の観測から、サブミリ波銀河の活発な星形成は、様々に異なる過程で引き起こされうることが示された。巨大銀河が成長期を迎える要因は1つではなく、複数のメカニズムが関係しているようだ。「これらモンスター銀河の画像を見たとき、その多様な姿に驚きました。アルマ望遠鏡とJWSTという最先端望遠鏡を活かし、銀河進化の謎に一石を投じることができました」(池田さん)。

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