金属過剰の太陽型星3つに系外惑星を検出

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岡山天体物理観測所などの観測から、金属量過剰を示す3つの太陽型星の周りに、計5つの系外惑星が発見された。中心星から遠く離れた公転周期の長い惑星は検出例が少なく、こうした惑星系の形成を理解するうえで重要な情報になると期待される。

【2015年10月21日 国立天文台 岡山天体物理観測所

国立天文台、東京工業大学、米・イェール大学を中心とするグループは、岡山天体物理観測所の口径188cm望遠鏡と米・ハワイのすばる望遠鏡、ケック望遠鏡を用いて、高金属量星の周りの系外惑星探索を進めてきた。

金属量とは恒星大気中に含まれる重元素(水素とヘリウム以外の元素)の量で、同グループでは太陽に近い温度の主系列星の中でも、とくに鉄の含有量が高い星を中心に惑星探索を進めている。高金属量の星は惑星が存在する確率がより高く、さらに最近の研究では惑星形成の現場である原始惑星系円盤も金属量によって特徴に違いがあるという指摘もあり、惑星形成を理解する上で高金属量の星は興味深い対象だ。


HD 1605(アンドロメダ座の7.5等級の恒星)は、年齢が約46億歳、質量は太陽の1.3倍、直径は太陽の3.8倍と見積もられた、やや年老いて進化した「準巨星」という分類の恒星だ。この星の周りには2つの惑星が検出された。

2つの惑星を持つ太陽系外惑星系の想像図
2つの惑星を持つ太陽系外惑星系の想像図(提供:国立天文台)

2つの惑星の軌道がほぼ円形であることから、惑星の形成後にお互いの重力や周りの星々から重力の影響を長い間受けていないと考えられる。しかし、この系の外側に伴天体が存在していることがわかった。遠くの伴天体は内側の惑星の軌道を乱してしまう(古在機構が働く)可能性があるが、軌道が乱された形跡はない。この惑星系は、外側の伴天体がどのように内側の惑星軌道に影響するのかを知るうえで重要な手掛かりとなる。


HD 1666(くじら座の8.2等級の恒星)はF型星という、太陽(G型星)よりもやや熱い主系列星だ。年齢はおよそ18億歳、質量は太陽の1.5倍、直径は太陽の約2倍と推定されている。この星では惑星が1つ検出された。

質量が太陽の1.5倍以上の主系列星は自転速度が非常に速いものが多く、視線速度法による惑星探索は困難である。この系は、アプローチが困難な重い主系列星周りでの惑星の姿を垣間見ることができる、貴重なサンプルといえる。

検出された惑星は非常に質量が大きく、軌道が大きく歪んでいる。これは、形成直後に同時に存在した惑星同士の重力でお互いを弾き飛ばし、系外に放り出されたり中心星に落ちてしまったりした結果、歪んだ軌道の惑星が1つだけ残ったという形成シナリオ(惑星散乱)が考えられる。HD 1666は金属量が非常に高いので、惑星の材料となる固体物質が多いと考えられ、惑星がいくつも同時に形成できる余地があり惑星散乱シナリオと整合的である。


HD 67087(ふたご座の8.2等級の恒星)もF型の主系列星で、年齢はおよそ15億歳、質量は太陽のおよそ1.4倍、直径は太陽の1.6倍と推定されてい。この星では2つの巨大惑星が検出された。

この惑星系で着目された点は、外側の惑星だけが高い離心率を示している(軌道が細長い楕円である)ことだ。惑星散乱シナリオ(くじら座の系と同様)では惑星同士の重力で離心率を大きく上昇させられるが、外側だけが大きく歪んだ軌道を持つことについては説明が難しい。一方、古在機構(アンドロメダ座の系と同様)による軌道進化では、伴天体からの重力を強く受ける外側の惑星の軌道だけが歪んでいることを説明できる可能性があるものの、そうした伴天体はなさそうだという。

また、アンドロメダ座の惑星系では伴天体の存在が示唆されるにもかかわらず惑星は円軌道であり、ふたご座の惑星系とあわせて考えると、それぞれ理論的に予想される進化とは対照的な特徴を持っていることになる。これらの惑星系は、伴星の有無と惑星の軌道進化への影響を調べるうえで、極めて重要な手がかりになると期待されている。さらに精密な軌道決定も重要になる。


岡山天体物理観測所による継続的な観測と、研究グループによって2004年に開始された国際プロジェクト「N2Kコンソーシアム」で10年以上にわたり蓄積されたデータは、長周期の惑星探索において世界的にも非常に大きなアドバンテージとなっている。中心星から遠く離れた惑星については周期が非常に長いために観測が進まず、まだわからないことが多い。研究グループでは、今後も継続的な観測を進めていく予定だ。

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