すばる望遠鏡OASIS計画の初成果、巨大惑星と褐色矮星を発見

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すばる望遠鏡と宇宙望遠鏡の観測を組み合わせた研究から、恒星を周回する軽い天体が2つ発見された。巨大ガス惑星や褐色矮星を直接とらえ、その性質を明らかにする探査計画「OASIS」の初成果だ。

【2025年12月8日 すばる望遠鏡

「OASIS(Observations of Accelerators with SCExAO Imaging Survey)」は、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」と「ヒッパルコス」による精密なデータと、すばる望遠鏡の極限補償光学装置「SCExAO(スケックスエーオー)」を用いた直接撮影により、恒星の周りに存在する未知の伴天体を特定し、質量や軌道を測定する探査計画だ。

「OASISでは、これまで観測対象として想定してこなかった恒星の周りに巨大惑星や褐色矮星を直接見ることができ同時に質量や軌道の精密測定も可能です」(米・テキサス大学サンアントニオ校 Thayne Curriesさん)。

そのOASISの初成果として、これまで詳しく調べられていなかった恒星の周囲に新たに2つの低質量天体が見つかった。1つ目に発見されたのは、しし座の方向約270光年の距離にある「HIP 54515 b」だ。木星の18倍弱の質量を持つ巨大ガス惑星で、太陽の2倍の質量をもつ恒星を公転している。公転距離は約25天文単位(太陽系では天王星軌道と海王星軌道の間)で、主星からわずか0.15秒角(1/24000度)しか離れていない。そのため、すばる望遠鏡の観測装置にとって限界に迫る挑戦だったが、見事にその姿が直接とらえられた。

HIP 54515 b
巨大ガス惑星HIP 54515 b。星のマークは主星の位置、点線は主星を遮るためのマスクの輪郭(提供:T. Currie/Subaru Telescope, UTSA、以下同)

近年の知見として、木星より重い惑星「スーパージュピター」の軌道が、より低質量のガス惑星よりもやや楕円になっている傾向があることがわかっていて、HIP 54515 bの軌道も同様だ。こうした特徴はスーパージュピターが太陽系のガス惑星と異なる形成過程をたどった可能性を示唆するものである。

2つ目の発見である褐色矮星「HIP 71618 B」は、うしかい座の方向約190光年の位置にある。質量は木星の約60倍で、太陽の2倍の質量をもつ恒星の周りを細長い楕円軌道で回っている。

HIP 71618 B
褐色矮星HIP 71618 B

HIP 71618 Bは惑星ではないが、将来の地球型惑星探査に重要な役割を果たす可能性がある。NASAが計画中の宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」では、主星の1000億分の1の明るさしかない地球型惑星を探す装置が予定されていて、HIP 71618 Bはその技術実証の対象として適しているからだ。

今回の2天体の発見は、天体の精密な位置測定と直接撮像との組み合わせにより、これまで隠されていた惑星や褐色矮星を明らかにできることを示すものだ。OASISでは数十個の候補星の調査が進められていて、今後さらに多くの発見が期待されている。巨大ガス惑星や褐色矮星がどのように形成されたのか、その大気がどのように進化するのかを理解する手がかりを与えてくれるのと同時に、地球型惑星を見つけるための望遠鏡技術の発展にも寄与するだろう。

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