アルマ+重力レンズ=視力13000 117億光年先の銀河もはっきりと

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アルマ望遠鏡の観測結果とそれをもとに作られた重力レンズ効果モデルから、117億光年彼方にあるモンスター銀河の内部構造や、その手前にある銀河の超大質量ブラックホールの存在などが明らかになった。

【2015年6月11日 東京大学

うみへび座の方向117億光年彼方の「SDP.81」は爆発的に恒星を生み出している銀河で、その手前に位置する距離34億光年の銀河が生み出す重力レンズ効果により、リング状に引き伸ばされた姿を見せている。2015年2月には、アルマ望遠鏡による高解像度での観測画像が公開された(参照:アストロアーツニュース:「117億光年彼方の銀河が見せるアインシュタインリング」)。

本研究成果の模式図
本研究成果の模式図(提供:アルマ望遠鏡の画像:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/C. Collao (ALMA)、地球の画像:気象庁)

田村陽一さんら東京大学と国立天文台の研究グループは、SDP.81のリング状の姿をもっとも精緻に再現できる重力レンズ効果モデルを世界に先がけて作り上げた。SDP.81周辺の重力場の歪みを高精度で補正した、いわば重力レンズの乱視矯正を独自にとりいれることで、銀河の内部構造の詳細が明らかになり、さらに重力レンズ効果を引き起こしている手前の銀河に超大質量ブラックホールが存在することが世界で初めて示された。

モンスター銀河SDP.81
モンスター銀河SDP.81。(左から)ハッブル宇宙望遠鏡撮影、ALMA撮影、ALMA撮影データと重力レンズ効果モデルを元にして再現した銀河の像。クリックで拡大(提供:ALMA (NRAO/ESO/NAOJ)/Y. Tamura (The University of Tokyo)/Mark Swinbank (Durham University))

まず、重力によって引き伸ばされて見える「アインシュタインリング」の複雑な微細構造から、銀河内部のおよそ5000光年の楕円状の領域に、幅200~500光年の塵の雲が複数分布していることがわかった。塵の雲は巨大分子雲とみられ、天の川銀河や近傍の銀河に見られるものと同じようなサイズだが、これほど遠方の銀河の内部がここまで詳しくわかったのは初めてのことだ。

また、銀河の中心像がきわめて暗いことから、手前の銀河の中心に太陽質量の3億倍以上におよぶ超大質量ブラックホールが存在するらしいこともわかっている。

世界最高水準の解像度と感度を誇るアルマ望遠鏡と重力レンズを組み合わせることで、人間の視力に換算して13,000というきわめて高い解像度が達成された。今後これを活かして、モンスター銀河の形成や超大質量ブラックホールの成長過程がさらに明らかになるだろう。

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