重力レンズで127億光年先の銀河もくっきりと

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【2011年4月15日 ケック天文台

ビッグバンからわずか2億年後に生まれた星を含む宇宙初期の銀河が見つかった。手前の天体の「重力レンズ効果」によって拡大され、より詳しく観測できる貴重なケースだ。仏・リヨン天文台天体物理研究センター(CRAL)のJohan Richard氏らの研究発表による。


(銀河団「Abell 383」の重力レンズの画像)

画像中央付近が「重力レンズ効果」を引き起こしている銀河団「Abell 383」。その重力によりさらに向こう側の銀河の像がゆがみ、円いレンズのように見える。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, J. Richard (CRAL) and J.-P. Kneib (LAM) Acknolwedgement: Marc Postman (STScI))

ハッブル宇宙望遠鏡やケック天文台での観測から127億光年先の銀河が発見された。赤外線天文衛星スピッツァーなどで詳しく調査したところ、この銀河がビッグバンでの宇宙誕生からわずか2億年後の135億年前にできた星々から成っていることもわかった。

これよりも遠い(=古い)銀河が今までに見つかっていないわけではないが、これだけ遠方の銀河をここまではっきりと観測できることは稀だ。地球から見て手前にある銀河団の重力によって増光する「重力レンズ」効果のおかげで本来の11倍も明るく見えるようになっている。

この発見により、初期宇宙が「再電離(イオン化)」した時期や過程について新しいことがわかるかも知れない。再電離とは、宇宙で最初に誕生した天体からの放射によって周囲に広がる中性水素の雲が電離した現象を指し、ビッグバンの数億年後に起こったと考えられている。

再電離を引き起こした天体の候補の1つとされる初期宇宙の銀河をもっと数多く、詳しく調べたいところだが、遠方銀河から地球に届くかすかな光を重力レンズ効果なしで観測するのは現時点では困難だ。赤外線放射を高い感度でとらえる観測機器として、2014年打ち上げ予定のジェイムズ・ウェブ宇宙望遠鏡(JWST)に期待が託されている。

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