初めて観測、重力レンズによる超新星の多重像

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93億光年彼方で起こった超新星爆発が、重力レンズ効果により4つの像となってハッブル宇宙望遠鏡で観測された。超新星がこのような形で観測されるのは初めて。今後もう1つの像が時間差で出現すると予測されており、数年後の“答え合わせ”も楽しみだ。

【2015年3月6日 HubbleSite

しし座の方向50億光年彼方の銀河団「MACS J1149.6+2223」の中に、その向こうにある93億光年彼方の銀河に現れた超新星が4重の像となって発見された。銀河団の強い重力がレンズのように超新星からの光をゆがませ、本来の20倍も明るい像を見せている。こうした重力レンズ効果による多重像は、遠方の銀河やクエーサー(明るい銀河核)のものは多く観測されてきたが、超新星のものは初めてだ。

銀河団と超新星の4重の像
銀河団とそれに属する楕円銀河(枠内)の重力によって、さらに遠方の超新星が4つの像となって観測された(矢印)(提供:NASA, ESA, and S. Rodney (JHU) and the FrontierSN team; T. Treu (UCLA), P. Kelly (UC Berkeley), and the GLASS team; J. Lotz (STScI) and the Frontier Fields team; M. Postman (STScI) and the CLASH team; and Z. Levay (STScI))

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた4つの像は数日~数週間の時間差で現われたが、これはそれぞれの像が異なる経路をたどって地球に届いたためだ。ダークマター(正体不明の重力源)が多い場所を通過する像は、重力レンズ効果の影響を大きく受けるので地球までの距離が長くなり、遅く到達するのである。

今回の発見をした米観測チーム「GLASS」は、同じ超新星の別の像が20年前に現われたはずで、さらに別の像が今後5年間で銀河団のどこかに現われるだろうと予測している。この予測は銀河団に含まれるダークマターのモデルから導かれたもので、数年後に答え合わせをすることでこのモデルをさらに洗練させることができる。

今回の超新星はノルウェーの宇宙物理学者Sjur Refsdalさん(1935~2009年)にちなんで「レフスダール」と命名された。Refsdalさんは1964年、時間差で現われる超新星の重力レンズ像を利用して宇宙の膨張を調べるという手法を初めて提唱した。天文学者たちが半世紀もの間待ちわびた発見により、またひとつ宇宙の謎の解明に大きく近づくことが期待される。


ハッブル25周年

1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡の25周年キャンペーンが行われている。全米各地で講演会やコンサートなどの記念イベントが行われるほか、オンラインでは歴代ベスト画像の投票やトリビュート動画コンテストが開催される。動画コンテストで優勝すると、なんと打ち上げ3年後に修理交換した太陽パネルの部品がもらえる。これまで数々の発見を成し遂げてきたハッブルへの思いを3分以内に自由な形で表現し、動画をアップロードしよう。締め切りは3月12日となっている。

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