古代エジプトの神の目に似た、珍しい重力レンズ天体

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すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSCが撮影したデータの中から、2つの遠方銀河が手前にある別の銀河によって同時に重力レンズ効果を受けているという、極めて珍しい重力レンズ天体が発見された。見た目もユニークな天体で、古代エジプトの神聖なる神の目にちなみ「ホルスの目」と名付けられた。

【2016年7月28日 すばる望遠鏡国立天文台

遠くの銀河から来る光が、その手前にある別の銀河によって大きく曲げられる現象は「重力レンズ効果」と呼ばれており、背景の銀河は形がゆがんだり増光して見えたりする。重力レンズ効果が起こるのは稀なことで、通常は手前の銀河によって背景にある銀河1つだけに効果が見られるものであり、複数の背景銀河がレンズ効果を受けることは極めて珍しい。

国立天文台の田中賢幸さんたちの研究グループが、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ「HSC(Hyper Suprime-Cam、ハイパー・シュプリーム・カム)」のデータを調べていたところ、この珍しい「複数の背景銀河が重力レンズ効果を受けているもの」と思われる天体が見つかった。

画像には複数の点に加え、完全なアインシュタインリングや円弧状の天体(いずれも重力レンズ効果に特徴的な像)が見られる。さらに中心には重力レンズを引き起こしている銀河もあって、これらがうまく並んで切れ長の「目」のような形をなしている。古代エジプトの神聖なる神の目に似ていることから、研究チームではこの天体を「ホルスの目」と名付けた。

ホルスの目
ホルスの目。明るいオレンジの天体がレンズ源となった手前の銀河で、赤っぽいリングと青っぽいリングがそれぞれ背景にある重力レンズ効果を受けた銀河(提供:国立天文台)

「ホルスの目」の画像を詳しく調べると、異なる色をした2つのリング状・円弧状の天体であることがわかった。これは重力レンズ効果を受けた背景銀河が、1つではなく2つあることを強く示唆している。

過去の観測から、重力レンズ効果を引き起こしている手前の銀河までの距離は70億光年(赤方偏移z=0.795)であることが知られている。チリのマゼラン望遠鏡を用いて背景天体の距離を測定したところ、それぞれ90億光年(z=1.30)、105億光年(z=1.99)であることがわかった。さらに興味深いことに、遠いほうの銀河ではわずかに異なる2つの赤方偏移が得られている。「もしかしたらこの銀河は、衝突合体の過程にある銀河のペアなのかもしれません」(国立天文台 Kenneth Wonさん)。

今後HSCの観測で、「ホルスの目」のような複数天体の重力レンズ天体がさらに10個ぐらい見つかることが期待されている。こうした天体は、銀河の基本物理や過去数十億年にわたりどのように宇宙が膨張してきたのかを探る手掛かりとなる。夜空に浮かぶ「太古の目」は、宇宙の歴史を紐解くのに一役買っているのだ。

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