超新星残骸「カシオペヤ座A」をモデルで再現、ニュートリノ駆動の爆発を支持

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超新星残骸「カシオペヤ座A」の物質の空間分布や量、膨張速度などがコンピューターシミュレーションで再現された。中性子星からのニュートリノが超新星爆発を引き起こすという理論を支持するものだ。

【2017年6月28日 理化学研究所

大質量星は超新星爆発を起こして一生を終える。超新星爆発にはいくつかの種類があるが、ほぼ鉄でできた恒星の中心核の質量が太陽の約1.5倍に達し重力崩壊を起こして爆発するというタイプでは、超高密度の中性子星があとに残される。その際に莫大なエネルギーが解放され、大部分はニュートリノとして放射される。

ニュートリノは典型的な超新星爆発に必要とされる100倍以上ものエネルギーを運ぶので、超新星爆発を引き起こす役割を担っているという理論的な予測がある。高温の中性子星の内部からニュートリノが漏れ出すと、その一部が周囲のガスに吸収されてガスの温度が上昇し、ガスの運動が激しくなって超新星爆発が始まるというものだ。

超新星爆発では星の外層とともに、星内部の核融合反応で作られた重元素や、爆発時の高温環境下で生じた放射性チタン、放射性ニッケルといった新しい元素が吹き飛ばされる。この時、ニュートリノで加熱されたガスの動きが激しいため爆発波は非球状に伝わり、超新星残骸は広範囲にわたって非対称形になる。

理化学研究所のAnnop Wongwathanaratさんたちの研究チームは、コンピューターシミュレーションで超新星残骸「カシオペヤ座A」の物質の分布などを再現し、ニュートリノ駆動による超新星爆発の理論を検証した。カシオペヤ座Aは1万1000光年彼方にあり、1680年ごろに光が地球に届いたと考えられている(しかし超新星の観測記録はない)天体だ。距離が近く発生からあまり時間が経っていないおかげで詳細な観測が可能であり、理論モデルとの比較にも適している。

カシオペヤ座A
超新星残骸「カシオペヤ座A」。(青)放射性チタン44Tiの分布、(白と赤)鉄の分布、(黄色×印)爆発の中心、(白色×と矢印)中性子星の現在の位置と移動方向(提供:Macmillan Publishers Ltd: Nature; from Grefenstette et al., Nature 506, 339 (2014); Fe distribution courtesy of U. Hwang.)

爆発の非対称性は、中性子星が反動によって中心から動いたり、爆発が強かったほうでより多くの物質が熱せられチタンやニッケルなどが多く生成されたりする(そちら側に多く分布する)ことに現れる。Wongwathanaratさんたちは数年前に3次元シミュレーションでこれらを予測していたが、カシオペヤ座Aの最新観測で予測が確認された。

さらに、物質の分布だけでなく、モデルで再現された元素の量やガスの膨張速度、中性子星の速度もカシオペヤ座Aに見られるものと驚くほど一致していた。「カシオペヤ座Aがニュートリノによって引き起こされた超新星爆発の残骸である可能性を強く裏付けています」(独・マックスプランク研究所 Hans-Thomas Jankaさん)。

とはいえ、カシオペヤ座Aという一例だけで大質量星の超新星爆発がニュートリノからのエネルギーで引き起こされるというには不十分だろう。研究チームでは今後、多くの若い超新星残骸を詳しく分析し、この理論予測を確かめる予定である。