中性子星合体によるショートガンマ線バーストの駆動機構を解明

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スーパーコンピューターを用いたシミュレーション研究により、連星中性子星の合体が引き起こすショートガンマ線バーストはダイナモ機構と呼ばれるメカニズムで駆動されることが明らかになった。

【2024年2月26日 京都大学

2017年8月、中性子星同士の合体で放出された重力波「GW170817」が初検出された。この事象に対応する天体も様々な電磁波で観測され、重力波と電磁波を組み合わせた「マルチメッセンジャー天文学」の扉が開かれた。

この際にショートガンマ線バースト(継続時間の短いガンマ線バースト)と呼ばれる宇宙最大規模の爆発現象が付随したことで、長年謎であったショートガンマ線バーストの起源が連星中性子星の合体であると示された。しかし、依然としてその駆動メカニズムはよくわかっていなかった。

重力波「GW170817」を発生させた連星中性子星の合体を描いた動画「Doomed Neutron Stars Create Blast of Light and Gravitational Waves」(提供:NASA's Goddard Space Flight Center/CI Lab

また、連星中性子星合体がショートガンマ線バーストとして観測されるには、光速に近いスピードで伝搬するジェットが駆動される必要がある。連星中性子星が元々持つ磁場強度ではジェットの駆動には不十分なため、合体時に何らかの過程で中性子星の磁場が増幅されると考えられる。しかし、このジェット駆動の過程もこれまでは不明だった。

京都大学基礎物理学研究所/独・マックスプランク重力物理学研究所の木内建太さんたちの研究チームは、過去20年以上にわたり独自のコンピュータープログラムを開発し、連星中性子星合体の問題に取り組んでいる。連星中性子星合体の最大の特色は、一般相対論的重力、強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用という4つの基本相互作用全てが本質的になるという点だ。木内さんたちはこれら基本相互作用の効果を全て取り入れたプログラムを作成し、スーパーコンピューター(マックスプランク重力物理学研究所の「Sakura」、および理化学研究所の「富岳」)で計算した。その結果、連星合体後の1秒間について、世界最高空間解像度の一般相対性論シミュレーションに成功した。合体後1秒間という長さは従来の10倍で、世界最長のシミュレーションである。

放出物質の電子モル比、密度等高面と磁力線、磁場強度等高面
シミュレーション結果。(左)放出物質の電子モル比、(中)密度等高面と磁力線、(右)磁場強度等高面(提供:林航大(マックスプランク重力物理学研究所研究所))

データを解析したところ、連星中性子星合体後に形成された超大質量中性子星の内部で、自転方向の磁場であるトロイダル磁場を生成する「Ω(オメガ)効果」と自転軸を含む面(子午面)内の磁場であるポロイダル磁場を生成する「α(アルファ)効果」とが交互に働く「αΩダイナモ機構」により、高度に揃った強磁場が生み出されることがわかった。連星中性子星合体により、強く磁化された超大質量中性子星(マグネター)が形成され、ショートガンマ線バーストが駆動されるとする説を支持する結果だ。

また、この強磁場によってほぼ光速で伝搬するジェットが駆動され、それに伴って中性子を過剰に含む物質が太陽質量の10%程度放出されることも見出された。金やウランなどの元素が連星中性子星合体で合成されて電磁波で非常に明るく光り輝くことを示唆する結果であり、マグネターがショートガンマ線バーストを駆動するという仮説を観測的に検証可能であることを示している。

今回行われたシミュレーションの紹介動画「What fuels the powerful engine of neutron star mergers?」(提供:Max Planck Institute for Gravitational Physics)

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