銀河群観測の画像に偶然写り込んだチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星

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すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSCが、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の姿を「偶然」とらえた画像が公開された。

【2016年5月19日 すばる望遠鏡

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)は太陽を約6.6年の周期で公転する短周期彗星だ。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「ロゼッタ」が2014年に到達し、周囲を飛行しながら詳しい探査を続けている。

この彗星を、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」が撮影した。明るいコマや長いダストの尾がとらえられている。

HSCの視野に入り込んだチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(下)。2016年3月8日 02:40~03:50ごろ(ハワイ現地時間)撮影。左の明るい部分がコマで右斜め下に伸びるのがダストの尾、中央を左右に横切っているのがダストトレイル(提供:国立天文台)

実はこのとき、すばる望遠鏡の観測ターゲットはチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星ではなかった。すばる望遠鏡が本来狙っていたのは、しし座の方向1億8000万光年彼方の銀河群HCG 59(ヒクソン・コンパクト銀河群59)だ。彗星は日々天球上を移動しているが、ちょうど銀河群HCG 59の近くにあるときに観測が行われ、HSCの視野が満月9個分と広いこともあったおかげで、偶然写り込んだのである。

さらに、HCG 59の観測自体も偶然が重なって行われたものだという。この日から、すばる望遠鏡では「キュー観測」という観測方法がスタートした。天候や空の条件、観測課題の優先度などを考慮して、その夜の観測天体・天域をリストの中から柔軟に選びながら行われる観測だが、HCG 59の優先度は低かったため当初は別の観測が行われる予定だったのだ。ところが、当夜は薄曇りで観測条件が悪かったため、雲の影響を受けにくいHCG 59の観測課題が繰り上がったという経緯である。

撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の画像には、ダストの尾と共に、彗星の軌道上にちらばるダストトレイル(塵の集まり)も写っている。このダストトレイルの存在自体はすでに知られていたが、偶然得られた画像から彗星について新たな知見が得られるかもしれない。

「銀河群」の観測課題の研究責任者である八木雅文さん(国立天文台・法政大学)は「低評価を既に受け取っていた観測提案だっただけに、(銀河群が)観測されたこと自体が驚きだったのですが、その中にまさかこんな『おまけ』が写っているとは予想だにしませんでした。普段は天候が良いことに越したことはないのですが、今回は天候が悪かったおかげでこのデータが得られたのだと思うと、なかなか複雑な気分です」と語っている。