紫外線パルスから探るIa型超新星の起源

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3億光年彼方の超新星の観測から、紫外線の明滅が検出された。2通りの説があるIa型超新星の起源のうち、白色矮星に伴星からのガスが降着して爆発に至るという過程を示すものだ。

【2015年5月25日 CaltechCarnegie Science

白色矮星の連星系が起こす爆発現象、Ia型超新星は、宇宙におけるもっとも明るい現象のひとつだ。Ia型超新星はピーク時の明るさはどれもほぼ同じと考えられており、宇宙の「標準光源」として遠方の天体までの距離測定に用いられたり、宇宙の膨張速度の測定に使われたりしてきた。

そのIa型超新星の起源については、2つの説がある。2つの白色矮星同士が合体する際に超新星爆発が起こるという説(Double Degenerate:DD説)と、白色矮星の伴星からガスが降着して白色矮星の温度と圧力が上昇し爆発するという説(Single Degenerate:SD説)である。どちらが正しいかを決めるのは、超新星爆発がそれほど頻繁には起こらないという点や爆発前の星が暗すぎるという点で難しい。

ロボット観測システム「iPTF」を使って超新星を探していた米・カリフォルニア工科大学の研究チームは2014年5月に、約3億光年の距離に位置するかみのけ座の銀河IC 831に超新星を発見した。この天体「iPTF14atg」を天文衛星「スウィフト」で観測したところ、紫外線放射のパルス(明滅)が見られた。

紫外線パルスは、超新星爆発で放出された物質が伴星に衝突し形成された衝撃波が周囲の物質の燃焼を引き起こすシナリオと一致するもので、iPTF14atgの起源がSD説であることを示している。Ia型超新星の伴星の存在を示す直接的証拠のひとつで、少なくとも一部のIa型超新星の起源はSD説通りだといえる。

Ia型超新星のシミュレーション画像
Ia型超新星のシミュレーション画像。爆発によって秒速1万kmもの速度で画像右上方向に放出された物質(茶色)が、伴星(水色)と衝突する。衝突によって紫外線パルスが発生し、それが伴星により開けられた円錐形の穴から放射される(提供:Dan Kasen)

iPTF14atgのデータがSD説を支持する一方で、2011年におおぐま座の渦巻銀河M101に出現したIa型超新星「SN 2011fe」の観測データはSD説には当てはまらないものとなっている。Ia型超新星には2種類あって、SD説もDD説も正しいということだろう。

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