スーパーチャンドラセカール超新星は「星の中」で起こる爆発か

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超新星LSQ14fmgは白色矮星を起源に持つIa型に分類されるが、極めて特異な性質を示す。研究によれば、この爆発は白色矮星が別の恒星の内部で起こしたものらしい。

【2020年9月17日 カーネギー科学研究所フロリダ州立大学

超新星を観測して特性を調べる「カーネギー超新星プロジェクト II(CSP-II)」の一環で、米・フロリダ州立大学のEric Hsiaoさんたち37人からなる国際的な研究チームが、約1億光年の彼方にある特異な超新星「LSQ14fmg」を分析した。超新星LSQ14fmgはヨーロッパ南天天文台のラシーヤ天文台で行われているサーベイ観測「La Silla-QUEST(LSQ)」で、2014年にペガスス座の方向に発見された。

超新星LSQ14fmg
超新星LSQ14fmg(提供:Carnegie Supernova Project/Las Campanas Observatory)

LSQ14fmgはスペクトルの特徴からIa型超新星に分類されている。Ia型超新星は、白色矮星に伴星などからガスが流れ込むことで質量が増加し、「チャンドラセカール限界質量(白色矮星が自分の重さを支えられる限界の質量で、太陽の約1.4倍)」を突破したときに起こる爆発であることが知られている。同じ質量で爆発していることからIa型超新星の絶対的な明るさや光度変化は一定であると予想され、遠方銀河までの距離を判定するのにも使われてきた。ダークエネルギーによって宇宙の膨張が加速しているという現代宇宙論の基本知識も、Ia型超新星の観測から判明したことだ。

ところが、Ia型超新星のスペクトルを示しながらも異なる挙動を示す超新星がいくつか見つかっている。LSQ14fmgはそれらと比べても差異が際だっていた。爆発が始まったと推定される瞬間から明るさが最大になるまでの時間は異常に長く、その最大光度はIa型としては最も明るい部類だ。逆に減光は急激に進んだ。このように通常よりも明るいIa型超新星の元になった白色矮星は、何らかの要因でチャンドラセカール限界質量を突破していたのではないかと推測され、「スーパーチャンドラセカール超新星」と呼ばれることもある。

超新星LSQ14fmgの発見および研究を通じて、チャンドラセカール限界を突破するメカニズムを説明できる可能性が期待されている。「これは本当に独特で奇妙な現象ですが、それに対する私たちの説明も同じくらい面白いものです」(Hsiaoさん)。

研究チームは、チリのラスカンパナス天文台にあるスウォープ望遠鏡とデュポン望遠鏡、およびスペイン・カナリア諸島ラ・パルマ島のラ・パルマ天文台北欧光学望遠鏡で超新星LSQ14fmgを観測した。観測データを分析したところ、LSQ14fmgは超新星爆発自体の光に加え、爆発の噴出物が周囲の物質に衝突することでさらに明るくなっていたことがわかった。また、一酸化炭素が形成されていた証拠も見つかった。

この観測結果に基づき、研究チームはLSQ14fmgの元となったのは白色矮星と漸近巨星分枝星(AGB星)と呼ばれるタイプの恒星の連星で、両者が合体することで超新星爆発を起こしたのだと結論づけた。AGB星は寿命を迎えて白色矮星となる寸前の恒星であり、大きく膨らみ赤く輝く。その表面からは絶えず物質が放出され、これが後に惑星状星雲となる。爆発を起こした白色矮星は、表面から大量の物質を放出しつつあるAGB星の中に入り込み、その中心核と合体したことでチャンドラセカール限界質量を大きく超えたと考えられる。

爆発で飛び散った物質が既に放出されていた物質と衝突したときの輝きはLSQ14fmgをさらに明るくしただけでなく、その増光のピークを遅らせる効果も生み出す。一酸化炭素は通常のIa型超新星では生成されないが、LSQ14fmgのゆっくりと増光する環境では作られるという。同時に、一酸化炭素の生成は超新星を急激に冷却させ減光に転じさせる効果があったと研究チームは説明している。

青い雪玉星雲
研究チームを率いたHsiaoさんが撮影した惑星状星雲NGC 7662(青い雪玉星雲)。超新星LSQ14fmgは、このように物質が周りに放出された環境で起こったと予想されている(提供:Eric Hsiao)

「これは、漸近巨星分枝星の段階を終えて惑星状星雲になろうとしている系においてIa型超新星が起こり得ることを示す、初めての強力な観測的証拠です。また、Ia型超新星の起源を理解する重要な一歩といえます。これらの超新星は、ダークエネルギーの研究で使われる普通の(Ia型)超新星に紛れうるので、特に厄介な問題になる可能性があります。今回の研究は、Ia型超新星の起源に関する理解を深めるとともに、将来のダークエネルギーの研究に役立つことでしょう」(Hsiaoさん)。