岡部隕石、60年ぶりの里帰りと記念碑建立
【2018年12月27日 星ナビ編集部】
文:飯島裕さん(岡部隕石60年の会)
1958年に埼玉県の岡部(現在の深谷市)に落下した岡部隕石。地元で存在を知る人も少なくなった落下地点を後世に伝えるべく、記念碑の建立を目標にクラウドファンディングを行いました(星ナビ2017年5月号、9月号、2018年10月号)。その結果、100名を超える方々からご支援・ご協力をいただき、記念碑の除幕式と講演会を開催することができました。
記念碑は高さ140cmほどのステンレス製で、表面には隕石実物大のブロンズ製レリーフが嵌め込まれています。また、実際の隕石落下地点に標石を設置しました。御影石製で中央に記念碑と同じブロンズ製レリーフをあしらい、リアルな隕石落下地点であることを実感できると思います。
隕石落下60周年の前日、11月25日に除幕式が行われた記念碑。高さ140cmほどのステンレス製で、表面には隕石実物大のブロンズ製レリーフが嵌め込まれている。題字は山﨑さんご自身によるもの。裏面には、ご支援いただいた方々のお名前を刻んである。画像クリックで表示拡大(撮影:飯島裕、以下同)
イベント当日は穏やかな天気に恵まれ、午前中の記念碑除幕式では、高額のご支援をいただいた皆さま、深谷市教育長、地元代表の方、記念講演会の講師の先生方のご挨拶を賜りました。
午後は埼玉工業大学ものづくりセンターで記念講演会です。司会を務めてくださったのは国立天文台の山岡均先生。山﨑さんが語る落下当時の様子に続いて、国立科学博物館の米田成一先生、日本流星研究会の佐藤幹哉氏、東京大学の三河内岳先生、国立天文台副台長の渡部潤一先生に、隕石と太陽系にまつわるお話を講演していただきました。
隕石落下地点にほど近い埼玉工業大学ものづくりセンターで行われた記念講演会の様子。米田成一先生(左)には国立科学博物館で常設展示されている岡部隕石の実物を持参していただいた。ケースに入れて来場者に回覧され、大好評
ものづくりセンター隣の別会場では、フィールド・スタディによる移動式プラネタリウムの出張投影で岡部隕石特別プログラムの上映が行われ、こちらもたいへん好評でした。星の手帖社の隕石標本などの販売コーナーも人が絶えず、多くの方が隕石標本などを記念に買い求めていたようです。
別会場のプラネタリウム投影・星グッズ出店。講演会は300名を超え立ち見が出るほどの盛況で、来場者が最後まで講演に集中していた様子がたいへん印象的だった
イベントの最後には、記念品の抽選会を行いました。そこで1等賞の岡部隕石レプリカが当選したのが、茨城県から来られた「オカベさん」という偶然もあって、会場は最後まで大いに湧きました。
山﨑さんは、隕石落下地が深谷の名所になってほしいと語っていましたが、この記念碑をきっかけにし、宇宙や天体に想いを馳せていただける場所になれば、と考えています。そして、末長く隕石落下地と岡部隕石の物語が伝えられていくことを望んでいます。今回のプロジェクトにご支援ご協力をいただいた皆さまに、深くお礼を申し上げます。
※詳細は星ナビ2019年2月号に掲載します。
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