スターバースト銀河で起こる超新星爆発のエネルギーのゆくえ

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スターバースト銀河M82の中心領域における高温ガスの速度測定から、超新星爆発のエネルギーの大部分が高温ガスとして熱化している可能性が示された。銀河風の駆動源の大半はこの熱エネルギーとみられる。

【2026年4月28日 JAXA宇宙科学研究所

激しい勢いで星を生み出すスターバースト銀河では、大量の星形成に伴う多数の超新星爆発によって、銀河中心部のガスが数千万度の高温に加熱される。この高温ガスが駆動源となり、周囲の物質を押しのけたり巻き込んだりしながら高速の「銀河風」が形成されると考えられている。

銀河風の一部が銀河外へ流出すると、星の内部で作られた重元素を含む物質やエネルギーが銀河内外へ運ばれる。つまり銀河風は、銀河内外を結ぶ物質の輸送過程として、銀河の進化や宇宙の物質循環に重要な役割を果たす。

しかし、駆動源である高温ガスの運動を直接測定することは、これまでは観測性能の点で困難だった。そのため、超新星爆発のエネルギーがどの程度高温ガスとして蓄えられ、どの程度の物質が流出するのかを観測的に検証することはできていなかった。

国際共同研究チーム「XRISM Collaboration」はX線天文衛星「XRISM」に搭載された分光装置「Resolve」を用いて、代表的なスターバースト銀河であるM82の中心領域を観測した。M82はおおぐま座の方向1200万光年の距離にあり、葉巻銀河の愛称で知られ天文ファンの人気も高い。天の川銀河の約10倍の効率で星が生み出されていて、その銀河風は少なくとも4万光年先まで影響を及ぼしている(参照:「4万光年先のガス雲に吹きつける銀河の風」)。

M82
M82。X線、可視光線、赤外線画像を合成した擬似カラー画像。右上は銀河中心部のX線画像(提供:X線:NASA/CXC/JHU/D. Strickland、可視光線: NASA/ESA/STScI/AURA/The Hubble Heritage Team、赤外線:NASA/JPL-Caltech/Univ. of AZ/C. Engelbracht; XRISM Collaboration et al. 2026

観測の結果、Resolveの高いエネルギー分解能のおかげで、ガスの速度の広がり(視線方向)に約600km/s程度のばらつきがあることが明らかになった。これは高温ガスが予想以上に大きな運動エネルギーを持つことを意味するもので、超新星爆発のエネルギーの大部分が高温ガスとして蓄えられていることを示唆する結果だ。

M82中心領域のX線スペクトル
M82中心領域のX線スペクトル。(上)鉄輝線付近の拡大図、(下)全体。ガスの速度のばらつき(広がり)を考慮しないモデル(青)よりも、考慮したモデル(赤)のほうが観測とよく合っている(提供:JAXA宇宙科学研究所リリース)

高温ガスのエネルギーの約60%は分子ガスや中性ガス、電離ガスなどの低温物質を加速し、様々な温度や状態の物質からなる銀河風を形成するために使われているとみられる。また、残りの高温ガスの一部は銀河の重力を振り切り、銀河間空間へと流出する可能性も示された。銀河風の駆動源としてはこれまで宇宙線の可能性も考えられていたが、今回の結果は、基本的には「熱的なフィードバック」で銀河風の駆動が説明できることを示している。

M82の高温ガスが銀河スケールで広がる様子
M82(擬似カラー)の中心領域で生じた高温ガスが周囲の物質を巻き込みながら銀河スケールで広がる様子。矢印はガスの流れの方向、点線は銀河円盤を示す(提供:X線:NASA/CXC/JHU/D. Strickland、赤外線:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/C. Engelbracht、可視光線:NASA/ESA/STScI/AURA/The Hubble Heritage Team)

今回の研究は、銀河内に物質がとどまる過程と銀河外へ流出する過程の両方を統一的に理解するための重要な制約を観測から与えるものだ。銀河進化や宇宙の物質循環解明への寄与が期待される。

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