リュウグウとベンヌは最初からコマの形だった

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探査機が訪れた2つの小惑星「リュウグウ」と「ベンヌ」は、1つの母天体が衝突で砕かれた破片から生まれた兄弟の可能性がある。最近の研究から、両者の形状が似通っているのは「生まれつき」であり、表面に見られる違いも単一の母天体からの形成で説明できることが示された。

【2020年6月9日 UA News

現在、NASAの探査機「オシリス・レックス」は小惑星「ベンヌ」の探査を進めている。また、日本の探査機「はやぶさ2」は小惑星「リュウグウ」の探査を終え、地球帰還の途にある。

ベンヌ、リュウグウのどちらも、小さな岩石が集積した構造を持つ小惑星だ。より大きな天体が衝突で粉々になり、その破片が集まって形成されたという見方が有力で、ベンヌとリュウグウは同じ母天体から誕生したという説もある。そんな両小惑星の共通点と相違点がどのように生じたかに研究者の注目が集まっている。

共通点として特筆すべきなのは、赤道部が膨らんだコマ(独楽)あるいはそろばん玉のような形だ。これまで、この形状は長い年月をかけて徐々に発達したと考えられてきた。いびつな小惑星が太陽光を受けるとわずかに自転が速まる「YORP(ヨープ)効果」によって、寄せ集まった破片が数百万年かけて遠心力で赤道領域に集まり、コマのようになったという考えである。

ベンヌ
探査機「オシリス・レックス」がとらえた小惑星「ベンヌ」。2020年4月29日に約8kmの距離から撮影(提供:NASA/Goddard/University of Arizona)

しかし、オシリス・レックスと「はやぶさ2」の両チームが2つの小惑星について研究したところ、どちらも形成直後からコマの形をしており、YORP効果で発達したのではないという結論が得られた。

2つの小惑星の赤道にはどちらにも、大きなクレーターが存在している。ベンヌの場合、クレーターは、その大きさから同小惑星上に見られる最も古い特徴のうちの一つであることが示唆されている。そのような古いクレーターが赤道域を覆っているということは、コマのような形は小惑星の形成初期の時代に作られたはずだ。

「ベンヌの母天体を破壊した衝突を再現したシミュレーションによって、これらの小惑星は最初からコマの形で誕生したか、小惑星帯で形成された後の早い段階でこの形になったことを私たちは示しました。探査機が送ってきた画像にとらえられているような、赤道域における大きなクレーターの存在は、YORP効果によって新たに小惑星の形が変化した可能性を排除するものです。新たにYORP効果が小惑星を変形させたなら、それらのクレーターは消えてしまったはずだと私たちは予想します」(米・アリゾナ大学 Ronald Ballouzさん)。

ベンヌとリュウグウには表面に水を含む粘土鉱物が存在するという共通点もあるが、リュウグウの表面物質はベンヌに比べて水分が少ない。これはリュウグウの表面がある時点でより加熱されていたことを意味する。

ベンヌとリュウグウが同時に作られたと仮定した場合、水分量の違いを説明する2つの可能性がシミュレーションに基づいて考えられている。一つは、粉々になった母天体の破片のうち、表面に近かった物質がベンヌを構成し、中心部分に近かったものの多くが集まってリュウグウになったというものだ。もう一つは、衝突時に破片が受けた熱量が場所によって異なったというものである。つまり、リュウグウを作る基になったのは、より高温となる衝突地点に近い領域の物質で、ベンヌのほうは衝突の影響を受けずに高温とならなかった離れた領域の物質から作られたという可能性である。

ベンヌとリュウグウの形成シミュレーション動画(提供:The University of Arizona)

小惑星から持ち帰られるサンプルや更なる小惑星表面に関する観測データの分析から、2つの小惑星の歴史に関するより明確なアイディアが得られることだろう。小惑星のサンプルからは、広く炭素質の小惑星や隕石について、その起源や形成や進化などに関する見識も得られることが期待されている。

「シミュレーションから、ベンヌとリュウグウがどのように形成されたのかに関する新しく貴重な見識が得られました。両小惑星のサンプルが地上の実験室に持ち帰られれば、より詳しくモデルの確認が可能になるかもしれません。さらに2つの小惑星の本当の関係も明らかにできる可能性もあります」(オシリス・レックス主任研究員 Dante Laurettaさん)。

探査機「はやぶさ2」が地球に帰還しリュウグウのサンプルが届けられるのは今年末の予定だ。一方のオシリス・レックスは10月20日に初のサンプル採取を実施する予定で、ベンヌのサンプルを携えた探査機の地球帰還は2023年9月24日となっている。

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