櫻井さん、たて座に10等級の新星を発見

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茨城県の櫻井幸夫さんが6月29日、たて座に10等級の新星を発見した。

【2018年7月3日 VSOLJニュース

著者:前原裕之さん(京都大学)

天の川の中に見える星座の一つで、いて座やわし座、へび座に囲まれた比較的小さな星座のたて座の中に新星が発見されました。新星を発見したのは茨城県水戸市の櫻井幸夫さんです。

櫻井さんは6月29.5768日(世界時、以下同。日本時では22時50分ごろ)に焦点距離180mmのレンズとデジタルカメラを用いて撮影した画像から10.3等級の新天体を発見しました。6月23日に櫻井さんが撮影した画像にはこの天体は写っておらず、この1週間ほどの間に明るくなった天体であることがわかりました。

発見を受けて清田誠一郎さんや吉本勝己さん、野口敏秀さん他によって行われた観測によると、この天体の正確な位置は以下のとおりです。

赤経  18h29m22.93s
赤緯 -14°30′43.9″(2000年分点)

たて座の新星
たて座の新星の観測画像(撮影:吉本勝己さん)

たて座の新星の位置
たて座の新星の位置。画像クリックで星図拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

これは、昨年発見され8等台まで明るくなった新星たて座V612(=ASASSN-17hx)のすぐ近くです(参照:「たて座に新星が出現、9等まで増光」)。

この天体の分光観測は6月30日に天体のスペクトル観測を精力的に行っているヨーロッパを中心としたアマチュアの観測者を含むグループによって実施され、P Cygプロファイルを持つHαや一階電離した鉄の輝線の他、青方偏移したHβ、ナトリウム、マグネシウムなどの吸収線が見られることがわかりました。これらのスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが判明しました。

その後の観測によると、この天体は7月1日には10.6-10.8等ほど、2日には11.2-11.4等ほどと、発見時よりも暗くなったことが報告されました。今後の明るさやスペクトルの変化が注目されます。

櫻井さんの新星発見は2016年10月以来となります。