「ひとみ」をすばる等で観測、通信は依然復旧せず

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通信異常状態に陥っているX線天文衛星「ひとみ」の状況について、JAXAは8日に記者発表を行った。現在「ひとみ」は約5秒に1回と高速回転しているとみられており、減速しないと通信復旧が難しい。しかし、異常発生後に短時間ながら電波を3回受信できたことから、衛星本体の一部機能が残存している可能性がある。国内外の多数の機関と協力し、衛星の状態の把握や通信復旧の試みが続けられている。

【2016年4月11日 JAXA

これまでに得られているデータから、「ひとみ」は3月26日の3時過ぎまでは正常であったが、その約50分後に姿勢異常が発生したと考えられている。以降、3月28日までに3回「ひとみ」からの電波を受信しているが、その後は10日以上にわたって通信が確立できていない。

観測を行う「ひとみ」の想像図
観測を行う「ひとみ」の想像図(提供:JAXA)

JAXAの光学観測では、「ひとみ」本体らしきものも含め4個の物体が観測されている。米国JSpOC(Joint Space Operations Center、国防総省戦略軍統合宇宙運用センター)によると、現在「ひとみ」本体と他10個に分離しているようだが、軌道まで把握できているのは先週と同じく2個のみだ。軌道の変化は、本体と思われる一番大きな物体のものが一番小さい。

すばる望遠鏡がとらえた「ひとみ」とみられる物体
4月2日にすばる望遠鏡のHyper Suprime-Camがとらえた「ひとみ」と思われる物体。追尾誤差と大気のゆらぎによる像の広がりがあるものの、明るい部分の広がりから数m以上の物体であると推定される。クリックで拡大(提供:国立天文台、すばる望遠鏡)

3月31日、東京大学木曽観測所の広視野高速カメラ「トモエゴゼン試験機」で「ひとみ」の観測が行われ、明るさが変化する様子がとらえられた。

木曽観測所「トモエゴゼン試験機」でとらえられた「ひとみ」の光跡
「トモエゴゼン試験機」でとらえられた「ひとみ」の光跡(提供:東京大学木曽観測所)

データ解析から、「ひとみ」は現在5.2秒で1回転していると考えられている。このような回転を生じさせる要因として、姿勢制御系の異常が候補に挙げられている。回転運動をすると、衛星の構造上、太陽電池パドルなどが一番大きな影響を受けやすく、衛星本体から分離する可能性がある。分離したのがパドルかどうかは不明だが、仮にパドルだとしても電波が受信できたことから一部は残っていると思われ、6枚のうち3枚が残っていれば何とか観測が可能だということだ。

「ひとみ」はすでに蓄電池が枯渇しており、現在の回転速度が減速しないと通信復旧のための電源が確保できない。しかし一方で、簡単に回転速度が遅くなるとは考えにくい。まずは国内外の機関と協力し、地上からの光学観測でわかる明滅状態から推定できる時間変化を元に、回転速度の傾向を明らかにしていく。

そのうえで、「ひとみ」本体と思われる物体の回転周期や回転軸、現在の形状などのデータを取得し、現状を明らかにしていく意向だという。今回発生した通信異常は姿勢異常とそれに伴う物体の分離が主要因と考えられることから、本体部の運動状態をできるだけ正確に把握して原因を究明する考えだ。一時は通信ができたことから衛星の機能が残っている可能性もあり、通信復旧に向け長期的な運用が続けられる。

なお、会見場での質問に答えるかたちで「ひとみ」の初期観測画像の公開についての発表もあった。当初は3月末に公開を予定していたが、現状では時期未定となっている。初期観測成果を基にした論文執筆が進められており、その論文に合わせて画像も公開されるとのことだ。

状況報告会は当面、毎週金曜日に開かれ、その様子はインターネットで視聴できる。

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