VERAとアルマで迫る、水メーザーバーストの発生メカニズム
【2014年11月4日 国立天文台VERA】
オリオン座大星雲の中心にある赤外線星雲「オリオンKL」は、太陽の10倍以上の大質量星など多くの星が誕生しつつある活発な領域だ。この領域では突発的な強いメーザー「スーパーメーザー」が十数年ごとに発生することが知られている。メーザーとは、水分子で増幅されたマイクロ波放射のことだ。
国立天文台の廣田朋也さんらは国立天文台の電波望遠鏡ネットワーク「VERA」を用いて、2011年3月から発生した水メーザーバーストを継続監視していた。2011~2012年の間に3回のピークがとらえられ、2012年6月には最大強度(135000Jy)に到達した。
観測では、水メーザーバーストを起こすガスが、生まれたばかりの大質量星「電波源I」から南西方向へと噴き出すようすが検出された。またチリのアルマ望遠鏡による電波観測から、周波数321GHzの電波シグナル(ギ酸メチルおよび連続波放射を示す)が強い「コンパクトリッジ」という領域の近くで水メーザーバーストが発生していることがわかった。
アルマ望遠鏡による電波画像(クレジット:T.Hirota et al.)
これらのことから、電波源Iからのアウトフローがコンパクトリッジにぶつかることによりメーザーが明るくなり、水メーザーバーストが発生すると考えられる。
〈参照〉
- 国立天文台VERA: VERAとALMAの連携でオリオンKL 水メーザーバーストのメカニズムに迫る
- PASJ: VERA and ALMA Observations of the H2O Supermaser Burst in Orion KL 論文
〈関連リンク〉
- 国立天文台VERA: http://veraserver.mtk.nao.ac.jp/
- JAXA宇宙科学研究所 電波天文グループ: http://wwwj.vsop.isas.jaxa.jp/
- VLBI用語集: メーザー
- アルマ望遠鏡: http://alma.mtk.nao.ac.jp/
- 星ナビ.com こだわり天文書評: 「ALMA電波望遠鏡」
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