世界初、一酸化ケイ素の4輝線同時VLBI観測

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VERAの新システム「OCTAVE-DAS」により、世界で初めて、4つの電波周波数帯における一酸化ケイ素を同時にVLBI観測することに成功した。

【2017年2月3日 国立天文台VERA

国立天文台の小山友明さんたちの研究チームは、国立天文台の電波干渉計VERAの観測感度や効率を向上させるため、新しい光結合データ取得システム「OCTAVE-DAS」を開発した。このシステムでは従来に比べて8倍の周波数帯域を同時に観測でき、これまでVERAで観測できなかった暗い天体の観測や、複数回に分けて観測していた別々の電波放射の同時観測が可能となる。

光結合・アナログ-デジタル変換器「OCTAD」
光結合・アナログ-デジタル変換器「OCTAD」。光結合データ取得システム「OCTAVE-DAS」の一部(提供:国立天文台)

OCTAVE-DASをVERAや野辺山45m電波望遠鏡に搭載して、漸近巨星分枝に分類される古い恒星のうみへび座W星を観測したところ、4つの異なる一酸化ケイ素放射を同時観測することに世界で初めて成功した。

うみへび座W星の電波スペクトル
VERAにOCTAVE-DASを搭載して得られた、うみへび座W星の電波スペクトル。異なる線種は、様々なエネルギー状態にある一酸化ケイ素から放出される電波を表す(出典:Oyama et al., 2016, PASJ, 68, 105)

また、4つの放射源の相対位置について、励起温度(粒子の励起状態に基づいた温度)が高いもののほうが低いものより外側に位置していることがわかった。温度が高いものが中心星に近い場所で発生しているという従来の考え方とは異なる結果で、古い星の周辺環境に対する研究に再考を迫るものとなる。

OCTAVE-DASでは今後、これまで観測が難しかった暗い天体や、同時性を必要とする天体(複数の観測周波数で明るさが変動する天体など)の理解・研究が進められていくことが期待される。

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