電子情報通信学会マイルストーンに選定、国立天文台の「高感度電波望遠鏡技術」と「スパコン GRAPE」
今年100周年を迎えた電子情報通信学会が「電子情報通信学会マイルストーン」を認定し、そのなかに国立天文台が開発・運用に携わってきた「高感度電波望遠鏡技術」と天文学専用スーパーコンピュータ GRAPE」が選ばれた。
「高感度電波望遠鏡技術」には、1982年に完成した野辺山45m電波望遠鏡、1997年に打ち上げられた電波天文衛星「はるか」を用いたスペースVLBI(超長基線電波干渉計)システム、2002年に観測を開始したVERA、そして2011年に観測を開始したアルマ望遠鏡が含まれている。
選定にあたっては、望遠鏡技術を一歩一歩高めながら観測性能を向上させ、銀河や惑星系の誕生に迫る天文学観測に大きく貢献してきたことが高く評価された。
国立天文台野辺山45m電波望遠鏡(左上)、VERA水沢局20m望遠鏡(右上)、アルマ望遠鏡(下)(提供:国立天文台、Y. Beletsky (LCO)/ESO)
また「天文学のための専用スーパーコンピューター GRAPE」は、野辺山ミリ波干渉計のデータを処理する相関器に端を発した天文学専用の高性能コンピューターの開発が評価された。
相関器の開発をリードした国立天文台名誉教授の近田義広さんは、独自の処理方法を相関器に実装し、さらにそのアイディアを発展させて重力多体問題を効率よく計算する専用スーパーコンピューターを構想した。その構想に基づいて、東京大学名誉教授の杉本大一郎さんたちが重力多体問題専用計算機「GRAPE」を開発した。その後継機「GRAPE-DR/GRAPE-9」は、現在も国立天文台などでコンピューターシミュレーションに活用されているほか、分子間に働く力を計算する分子動力学に特化した計算機「MD-GRAPE」の開発にもつながっている。
国立天文台が運用する「GRAPE-DR」(提供:飯島裕)
「電子情報通信学会マイルストーン」認定の目的は、電子情報通信の研究開発の歴史と意義を振り返ること、さらなる革新を起こすと期待される次代の研究者や技術者へ認定された研究開発の創出過程を伝えることにある。社会や生活、産業、科学技術の発展に大きな影響を与えた研究開発の偉業として、「基礎・境界」「通信」「エレクトロニクス」「情報・システム」の4分野から242件が選ばれている。
〈参照〉
〈関連リンク〉
関連記事
- 2019/01/18 アルマ望遠鏡が明かす銀河内の「星の工場」
- 2019/01/17 大質量星形成領域の距離を精密に測定、原始星の存在も確認
- 2018/12/06 超大質量ブラックホールの周りにあるドーナツ構造の正体
- 2018/10/30 アルマ望遠鏡で調べたエウロパの温度分布
- 2018/08/06 星同士の衝突でまきちらされた放射性元素を発見
- 2018/06/28 多彩な構造を持つ、惑星が誕生する現場
- 2018/06/15 声優の緒方恵美さんがアルマ望遠鏡のPVで語りかける
- 2018/03/13 天の川銀河中心方向、いて座D HIIまでの距離の高精度計測に初成功
- 2017/06/15 野辺山45m電波望遠鏡が「IEEEマイルストーン」に認定
- 2017/03/06 銀河の「薄いガス」と「濃いガス」の同時観測に初成功
- 2017/02/03 世界初、一酸化ケイ素の4輝線同時VLBI観測
- 2016/12/26 アルマ望遠鏡のバンド5受信機がファーストライト
- 2016/03/30 高エネルギーガンマ線を放出する、超大質量ブラックホール候補天体の大規模探査
- 2016/02/15 45m電波望遠鏡と電波ヘリオグラフで大追跡、太陽黒点の謎
- 2015/12/02 太陽とはまったく異なる、小さく冷たい怪物天体
- 2015/11/09 2兆4600億kmの間欠ジェットを吹き出す原始星
- 2015/10/19 アルマ望遠鏡が明らかにした、遠方銀河の活発な星形成
- 2015/09/16 貧弱な矮小銀河の内部でパワフルな星形成
- 2015/06/17 大質量原始星候補から噴出する水蒸気ジェットの変動を追跡
- 2015/06/11 アルマ+重力レンズ=視力13000 117億光年先の銀河もはっきりと