アルマ望遠鏡が明らかにした、遠方銀河の活発な星形成

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アルマ望遠鏡などが激しく星形成活動を行っている遠方のスターバースト銀河7つを観測し、それらの銀河の環境が近傍のスターバースト銀河と似ていることを明らかにした。

【2015年10月19日 アルマ望遠鏡

「スターバースト銀河」とは、爆発的な星形成活動を行っている銀河のことだ。こうした現象は銀河の進化に重要な役割を果たしていると考えられている。

天の川銀河から近い(つまり、比較的最近の宇宙に存在する)スターバースト銀河では、ガスが星へと変換される効率が高いことが知られており、通常の銀河での星形成とは違ったメカニズムが働いている可能性がある。また、従来の研究から、銀河における星形成は90億年前に最も盛んだったことも知られている。しかし、近傍のスターバースト銀河と同様の効率的な星形成が昔の宇宙でも起こっていたかどうかなど、爆発的な星形成が引き起こされる物理的メカニズムは完全には明らかになっていない。

衝突銀河「Zw II 96」
銀河同士が衝突し爆発的な星形成が起こっている銀河「Zw II 96」(提供:NASA, ESA, the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration and A. Evans (University of Virginia, Charlottesville/NRAO/Stony Brook University))

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のJohn D. Silvermanさんらの研究グループは、南米チリのアタカマ高地にあるアルマ望遠鏡とフランスのビュール高原にあるビュール高原電波干渉計を用いて、星形成活動の盛んな遠くにある7つの銀河から放射される一酸化炭素分子ガスの電波を観測した。さらにその一部は、ハワイのすばる望遠鏡に搭載されたファイバー多天体分光器「FMOS」を用いて近赤外領域で観測が行われ、正確な赤方偏移の値や星形成率、金属量を測るのに用いられる水素原子や窒素原子、酸素原子それぞれから出される輝線が得られた。

銀河「PACS-867」(左)アルマ望遠鏡、(中央)HST、(右)赤外線天文衛星「スピッツァー」
(左)アルマ望遠鏡で得られた、銀河「PACS-867」における一酸化炭素ガスの分布図。星形成が行われている外へも分子ガスのかたまりが分布している。(中央)ハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたPACS-867。銀河の合体で大きくかき乱された構成物中に存在する若い星からの紫外線を示す。青の等高線は左画像のガス分子の位置で、ダストに包まれ新しい星が作られている領域と重なる。(右)スピッツァー望遠鏡で得られたPACS-867の赤外線画像(3.6μm)。ダストに包まれた星と分子ガスとの関連を示す。クリックで拡大(提供:(左)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), J. Silverman (Kavli IPMU), (中央)NASA/ESA Hubble Space Telescope, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), J. Silverman (Kavli IPMU), (右)NASA/Spitzer Space Telescope, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), J. Silverman (Kavli IPMU))

データを解析したところ、今回観測した遠方のスターバースト銀河では、一酸化炭素分子ガスの量はすでに減少していたものの高い星形成率を保っていたこと、期待されるほど早いガス量の減少はないものの近くのスターバーストと似た状況を示していることがわかった。つまり、昔の宇宙でも現在と似た環境下で爆発的な星形成が起こっていた可能性が示されたことになる。

今後、アルマ望遠鏡を用いた電波観測とFMOSを用いた近赤外線観測の両面から遠方のスターバースト銀河を調べることで、過去の宇宙で爆発的な星形成が起こっていた環境をより詳細に明らかにし、過去から現在に至るまでの銀河の進化に迫ることが期待される。

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