スターバースト銀河に100種以上の星間分子を検出

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スターバースト銀河NGC 253中心部の電波観測から、100種以上の星間分子が検出され、同領域に様々な進化段階にある星の領域が混在していることがわかった。

【2024年4月4日 アルマ望遠鏡

銀河内で星が誕生したり爆発したりする進化の段階は、分子ガスの状態と密接な関係があると考えられ、分子ガスの状態は様々な種類の分子の組成に影響している。分子ガスの状態や組成が異なると、そこから放たれる電波の周波数が異なるので、分子を調べるうえでは広い周波数範囲の電波観測を行うことが有効となる。

国立天文台をはじめ、ヨーロッパ南天天文台、アルマ望遠鏡の運用管理などを行っている合同アルマ観測所(JAO;Joint ALMA Observatory)、米国国立電波天文台を中心とする研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて星間化学(アストロケミストリー)分野の観測を行う「ALCHEMI(アルケミ)プロジェクト」として、ちょうこくしつ座の銀河NGC 253の中心部を観測した。NGC 253は爆発的に星を生み出す「スターバースト銀河」の一つで、スターバースト銀河としては私たちから最も近い1000万光年の距離にある。

ALCHEMIプロジェクトの観測では様々な分子が放つ電波信号が探査され、100以上の分子種が検出された。これは天の川銀河外の天体としてはこれまでで最多となるもので、エタノールや窒化リンなど天の川銀河外で初検出された分子も含まれている。

観測で得られた電波強度スペクトルのパターンをもとに、分子ガスの密度を推定したところ、NGC 253中心部における高密度ガスの量が天の川銀河中心部の10倍以上であることがわかった。これは、NGC 253の分子ガス量当たりの星形成の頻度が天の川銀河の30倍以上と非常に高い理由が、分子ガスの密度の高さにあることを示唆する結果だ。

スペクトル、NGC 253中心部の模式図
(背景)今回の観測で得られた知見に基づく銀河中心部の想像図、(上)観測で得られたスペクトル、(下)検出された様々な指標分子の存在から見えてきたNGC 253中心部の模式図(提供:(背景)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)、(上と下)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Martin, N. Harada, J. Holdship et al.)

では、銀河中心部の分子ガスはどのようにして高密度となったのだろうか。分子雲を高密度に圧縮するメカニズムの一つとして分子雲の衝突がある。衝突によって衝撃波が生じると、氷の微粒子の表面に凍結していたメタノールや二酸化炭素といった分子がガスとして蒸発し、電波望遠鏡で観測できるようになる。今回の観測で実際にこうした分子種が見られたことから、NGC 253の中心部では分子雲の衝突による分子ガスの圧縮が起こっていると考えられる。

また、NGC 253中心部に存在する活発な若い星の形成領域に、複雑な有機分子が豊富に存在していることも明らかになった。天の川銀河では、複雑な有機分子が若い星の周りに豊富に見られていて、NGC 253でも同様に活発な星形成が高温高密度環境を生成している可能性があるという。

さらに、星形成を減速させるような前世代の星が残した過酷な環境も明らかになった。大質量星が一生の終わりに超新星爆発を起こすと高エネルギーの宇宙線が放出されるが、その宇宙線のエネルギーが注入されたガスは凝縮しにくくなるために星の形成が難しくなる。今回の観測で得られた電波強度スペクトルから、太陽系近傍の少なくとも1000倍以上の速度で、宇宙線によって分子の電子が剥ぎ取られている領域があることもわかった。

以上のようにALCHEMIプロジェクトの成果として、NGC 253の中心に、星々が進化の様々な段階にある領域が混在しているということが、世界で初めて明らかになった。

研究チームは、従来の天の川銀河外の天体の研究よりもはるかに多い分子種の分布図も作成している。この分布図に機械学習の手法を適用して、星の進化段階の指標として使える分子を探したところ、新たに指標として使えそうな分子種がいくつか見つかった。今後、指標となるより多くの分子が同時に観測されるようになれば、星形成のメカニズムの理解が進展する道筋が開かれることだろう。

NGC 253中心部における種々の分子種の分布図
NGC 253中心部における分子種の分布図。分子ガスの環境や星の進化段階を示す各擬似カラーは次の通り:(青)分子ガスの全体的な分布、(赤)衝撃波、(オレンジ)比較的分子ガス密度の濃い場所、(黄)若い星の爆発的形成が進む領域、(マゼンタ)より進化が進んだ爆発的星形成領域、(水色)宇宙線の影響で電離した分子ガス(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), N. Harada et al.)

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