若い星を取り巻く、華やかな二重リング

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アルマ望遠鏡が、若い星「おおかみ座IM星」の周りに二重の華やかなリングをとらえた。重イオンでできたリングの化学的性質の観測は、原始惑星系円盤の性質を理解する手がかりとなる。

【2015年10月2日 アルマ望遠鏡

若い星「おおかみ座IM星」の周りにとらえられた二重のリングは、宇宙で最もありふれている重イオン(荷電分子)の一つ、DCO+(重水素‐炭素‐酸素)でできている。宇宙にはHCO+(水素‐炭素‐酸素)という重イオンがさらに多く分布しているが、DCO+はHCO+の水素が「水素重水素交換」という反応で重水素に置き換えられたものだ。

おおかみ座IM星の周囲の原始惑星系円盤
アルマ望遠鏡が観測した、おおかみ座IM星の周囲の原始惑星系円盤。中心の星を取り囲むDCO+の二重リングが見えている(提供:K. Öberg, CfA; ALMA (NRAO/ESO/NAOJ); B. Saxton (NRAO/AUI/NSF))

「アルマによって、今まさに惑星が形作られている円盤に起こっている化学的性質を観測することができるようになりました。分子は2つの美しいリングを形作っています。内側のリングについては見えると予想していたのですが、外側のリングは全くの予想外でした。この発見は原始惑星系円盤の外側の性質を理解する新しい手掛かりとなります」(米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センター Karin Öbergさん)。

星の近くでは温度が低く、材料となる一酸化炭素(CO)ガスが豊富にあるため、DCO+のリングが作られると考えられている。もっと星に近いとDCO+ができるには暖かすぎ、反対に離れてしまうと貯まっていた一酸化炭素がすべて凍り、塵の粒や微惑星の上に氷の膜を作るのだ。

外側のリングの存在から、研究チームでは次のような仮説を導いている。中心の星から遠くなるほど周囲の環境は冷たく暗くなるが、円盤の密度が非常に低い部分では、中心星からの光が円盤の内部まで突き刺さるように届く。この光によって、凍っていた一酸化炭素が昇華し円盤中に戻っていくことで、DCO+の生成が再び起こる。つまり、重水素でできた重い分子が、これまで予想されていなかったような場所で作られる可能性があるということになる。

今回の研究により、これらの分子が太陽系やその他の惑星系の形成史を探る有力な道具になることがわかった。

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