小嶋さん発見の重力マイクロレンズ天体に系外惑星が存在

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2017年11月に小嶋正さんが発見した重力マイクロレンズ現象について、光度変化を詳しく調べたところ、レンズ源となった恒星の周りに系外惑星が存在していることがわかった。重力レンズ法でこれまでに発見された系外惑星のうち、最も近い天体だ。

【2019年11月7日 東京大学

2017年11月1日(日本時間)、群馬県の小嶋正さんが、おうし座の方向で未知の増光現象を発見した。その後の追加観測により、この増光現象が「重力マイクロレンズ現象」であることが判明した(参照:「小嶋さん、明るい重力マイクロレンズ現象を発見」)。

重力マイクロレンズ現象とは、地球から見て2つの恒星がほぼ一直線上に並んだとき、手前の恒星(レンズ星)の重力レンズ効果により遠方の恒星(光源星)の光が集束し、光源星が変光して見える現象だ。このとき、もし手前のレンズ星の周りに系外惑星が存在していると、光源星の変光の様子に特徴的な変化が表れる。これを利用してレンズ星の系外惑星を探すという方法により、これまでに約100個の系外惑星が発見されてきた。

小嶋さんが発見した重力マイクロレンズ現象についても、欧州のアマチュア天文家や研究者たちの観測によって光度変化が詳細に解析された結果、系外惑星が存在していることが確認された。

光源星の光度変化
光源星の光度変化グラフ。色の違いは望遠鏡や観測波長の違いに対応している(提供:東京大学、以下同)

解析やモデル計算によると、レンズ星と惑星からなる手前の惑星系「Kojima-1L」までの距離は1600光年、光源となった遠方の恒星までの距離は2600光年と求められた。Kojima-1L系の惑星は、重力レンズ法によるものとしては最も近い系外惑星となる。また、Kojima-1Lの主星の質量は太陽の約0.6倍であり、惑星の質量は地球の約20倍、主星と惑星の距離は太陽~地球間とほぼ同じ約1億5000万kmであることがわかった。

従来、重力レンズ法で探索、発見されてきた系外惑星のほとんどは、星の数が多く確率的に現象が観測されやすい天の川の中心方向に位置しており、惑星系も光源も1万光年以上と遠いところにあったため、発見後の詳しい観測が困難であったが、Kojima-1L系は詳細な観測や研究が可能となる。

重力マイクロレンズ現象の想像図
重力マイクロレンズ現象の想像図。全体図の左側に描かれている2本の矢印は、光源星(3つの明るい天体のうち、一番左側)の光が惑星系「Kojima-1L」(同中央)の重力レンズ効果で曲げられて太陽系(同右側)に届く光線を示している。これまでに重力レンズ法で発見された惑星系(全体図に赤色で示された点)はいずれも銀河中心(全体図右上)方向に位置し、Kojima-1Lに比べて距離が遠い。挿入図は惑星系Kojima-1Lを拡大した想像図

この惑星の軌道は、惑星が形成されたと考えられる時期(恒星が誕生して数百万年後)における「スノーライン(雪線、水が凝結する境界)」の位置に相当している。この領域には氷成分が豊富に存在し、これを材料としたガス惑星が効率的に形成されると考えられているが、これまでの系外惑星探査においては技術的な制約などから、じゅうぶんな観測が行われていなかった。

今回の、比較的近距離での重力レンズ法による系外惑星探索は、この領域での惑星を検出しやすいことから、今後のより大規模な探索によって、さらに多くの惑星が見つかると期待される。その結果から、どのような質量の惑星がどのくらいの数存在しているかを、より正確に見積もれるようになるだろう。