小嶋さん、明るい重力マイクロレンズ現象を発見

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10月31日に群馬県の小嶋正さんが、おうし座方向で発見した約11等級の天体は、非常に珍しい明るい重力マイクロレンズ現象であることが明らかになった。

【2017年11月6日 VSOLJニュース

著者:前原裕之さん(国立天文台)

新星の捜索を熱心に行っている群馬県の小嶋正(こじまただし)さんによって、おうし座の中に発見された変光星TCP J05074264+2447555は、その後の調査により、非常に珍しい明るい重力マイクロレンズ現象であることが明らかになりました。

小嶋さんは2017年10月31.734日(世界時、以下同様、日本時間11月1日2時40分ごろ)に焦点距離135mmのレンズとデジタルカメラでおうし座を撮影した画像から、10.8等に増光している天体を発見しました。この天体は、9月2日と10月25日に撮影した画像にもそれぞれ13等と11.7等で写っていること、この天体の位置にはUSNOカタログにRバンドで13.6等の天体あることから、最近になって明るくなった天体であることがわかりました。この天体の位置は以下のとおりです。

赤経  05h07m42.72s
赤緯 +24°47′56.3″ (2000年分点)

発見画像
小嶋さんが撮影した発見画像。左が北

超新星のサーベイを行っているAll-Sky Automated Survey for Supernovae(ASAS-SN)の観測によると、この天体はもともと14等ほどでしたが1か月ほど前からゆっくりと増光を始め、10月19日には13.2等、発見直前の10月28日から30日には1日に0.2等のペースで急速に増光していたことが明らかになりました。星がこれほど明るくなるということは、何かしらの爆発現象が起こっていることが予想されます。

ところが、この天体では増光の前後で色の変化がないこと、国立天文台岡山天体物理観測所などで撮られたこの天体のスペクトルは通常のF型主系列星のものであることがわかりました。また、ガンマ線バースト観測衛星「スウィフト」に搭載されているX線望遠鏡と紫外・可視望遠鏡による観測で、この天体の位置にX線で明るくなっている天体は存在せず、紫外線での増光幅と可視光線での増光幅がほとんど同じであることがわかりました。

色やスペクトルが一切変化せずに明るさだけが増加する、という現象は、星と私たちの間にある別な天体が、その星と重なった時に起こります。星からの光が手前にある別な天体の重力によって曲げられることで明るくなるのです。このような現象は「重力マイクロレンズ現象」と呼ばれ、天の川銀河の中心方向の星や、大小マゼラン雲の星をターゲットにした天文学者による捜索が行われており、これまでにも暗い例は数多く発見されています。しかし、11等級という明るさのものは、これまで知られている中では2006年10月に岡山県の多胡昭彦さんによってカシオペヤ座の中に発見され7.5等まで明るくなった重力マイクロレンズ現象に次ぐ明るさで、非常に珍しい現象であると言えます(参照:「多胡さん発見の変光星はマイクロレンズ現象?」)。

これまでの観測によると、この天体は11月1日ごろに11.5等ほどまで明るくなった後に減光を始めており、今後1か月程度かけて元の明るさに戻っていくと思われます。しかし、手前にあるレンズ天体が惑星を持っている場合には、その惑星の重力レンズ効果によって、減光の途中で小規模な増光が起こる可能性もあり、今後の詳細な観測が望まれます。

増光現象の位置
増光現象の位置。クリックで星図拡大(「ステラナビゲータ」で表示)