原始惑星系円盤に隠された若い惑星系

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すばる望遠鏡の新装置による原始惑星系円盤の観測で、これまで円盤中の惑星から発せられていると考えられてきた光のほとんどが、実際は円盤の散乱光であることが明らかにされた。惑星は想定よりも小さいという可能性を示唆する結果である。

【2019年5月17日 すばる望遠鏡

地球から約500光年彼方にある、おうし座方向の若い太陽型星LkCa 15の周囲には、惑星の材料となるガスや塵で作られた原始惑星系円盤が広がっている。この円盤には大きな隙間が見られ、円盤中のその場所で若い惑星が形成されていることを示している。

これまでの観測から、LkCa 15は若かりしころの太陽系に似た惑星系を持ち、木星よりも質量が大きい形成途中の3つの惑星候補天体があると考えられてきた。3天体は中心のLkCa 15から数十億km離れたところ(太陽系では土星~海王星軌道に相当)にあるが、この天体からの光を太陽系と同じようなスケールで地上から直接とらえるのは非常に困難である。

NASAエイムズ研究センター/国立天文台ハワイ観測所のThayne Currieさんたちの研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された極限補償光学装置SCExAOと面分光装置CHARISでLkCa 15を観測した。SCExAOは地球の大気ゆらぎの影響をより高度に補正し、そのままではぼやけて見えてしまう星像をより鮮明に映し出すことができる。さらにCHARISに光を送ることで、天体から来る光の色の、場所ごとの違いを高い解像度で直接見分けることができ、惑星の大気成分などを詳しく調べることも可能となる。

観測データを解析したところ、LkCa 15の周囲から届く光の大部分は惑星からではなく、広がった弧のように見える円盤部分からの散乱光によるものであり、以前示唆されていた惑星候補と同じ明るさを持っていることがわかった。ケック望遠鏡を使った追観測からも、円盤の弧の形状が時間とともに変化していないことが確認され、軌道を回っている惑星からのシグナルと思われていた光は、円盤のような動きのない構造と一致していることが確かめられた。

LkCa 15
LkCa 15。(左)2017年9月7日にSCExAO/CHARISでとらえた画像。2つの弧のような形状は、LkCa 15の原始惑星系円盤が2つの構造を持っていることを示す。(中)理論モデルから予想されるLkCa 15の円盤からの散乱光。(右)3つの惑星があった場合に予想されるイメージ。画像クリックで表示拡大(提供:国立天文台/SCExAOチーム)

「LkCa 15の惑星系はかなり複雑です。SCExAO/CHARISによるデータは、これまでのシグナルは円盤本体から来ているものであることを示しています。つまり、惑星自身はより暗く(想定よりも質量が小さく)、円盤内に隠されている可能性が高いということです」(Currieさん)。

LkCa 15の円盤と、その円盤に隠された惑星からの光をはっきりと区別して見分けるのはかなり難しい挑戦だが、技術的には確実に前進している。SCExAOは今後も改良を継続していく予定で、近い将来、LkCa 15の円盤に存在する木星型惑星をとらえることができる可能性がある。「SCExAOのような最先端の撮像装置がもたらす観測結果は、私たちの太陽系が辿ってきた歴史が普遍的なものであるのか、それとも特別なものなのか、といった惑星系の起源と進化をよりよく理解するための糸口になります」(アストロバイオロジーセンター 田村元秀さん)。

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