鮮明にとらえられた、惑星を作る渦巻きのダイナミックな動き

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アルマ望遠鏡の7年間の観測データから、惑星の誕生現場である原始惑星系円盤の渦巻きのダイナミックな運動が世界で初めて検出された。この円盤は惑星誕生の直前状態にあるようだ。

【2025年10月2日 アルマ望遠鏡

惑星は「原始惑星系円盤」と呼ばれる、若い星を取り巻く円盤で作られる。しかし、惑星の詳しい形成過程については、多くの謎が残されている。

惑星形成のプロセスで重要な役割を果たすかもしれないと考えられているのが、原始惑星系円盤自身の重みで作られる渦巻き状の構造だ。渦巻きの中では円盤中に存在する固体微粒子の合体が効率的に進行し、最終的に惑星の大きさまで成長する可能性がある。また、渦巻き自体が分裂して、直接的に惑星となる可能性もある。

15個の原始惑星系円盤
溝やリング、渦巻き構造など多様な構造が見られる15個の原始惑星系円盤(研究成果として今年5月発表されたアルマ望遠鏡がとらえたもの)(提供:Richard Teague and the exoALMA Collaboration.、参照:「exoALMAが明らかにした動的で複雑な惑星誕生の現場」

もし渦巻き構造が、惑星が生まれる直前の状態を表すものであれば、渦巻き構造が見られる原始惑星系円盤は惑星の形成を研究するための絶好のターゲットとなる。しかし、よく似た形状の渦巻きは誕生した直後の重たい惑星によっても作られることが知られていて、渦巻きの存在だけからでは惑星が生まれる直前か直後かの区別をつけることは難しい。

国立天文台/総合研究大学院大学の吉田有宏さんたちの研究チームは、渦巻きの動き方によって、その構造が惑星誕生の直前か直後かを区別できるという理論的な予測に着目した。渦巻きが原始惑星系円盤自身の重みによってできている(惑星形成の直前の)場合、渦巻きは巻き付くように動き、やがては消えるはずだ。一方で、渦巻きがすでに作られた惑星によってできている場合には、渦巻きはその形を保ったまま惑星とともに回転を続けると予想される。

吉田さんたちは、おおかみ座の方向約500光年彼方の若い恒星「おおかみ座IM」を取り巻く原始惑星系円盤について、アルマ望遠鏡が2017年から2024年までの間に4回観測した画像を解析した。すると、円盤中の渦巻きが巻き付くようなダイナミックな動きが示された。

おおかみ座IMの周囲の原始惑星系円盤の渦巻き状構造
おおかみ座IMの周囲の原始惑星系円盤の渦巻き状構造が変化する様子(提供:ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), T. Yoshida et al.、以下同)

さらに、その巻き付きの速度が理論予測と一致していることもわかった。渦巻きが原始惑星系円盤自身の重みによってできていることを意味する結果である。このような巻き付き運動の検出は、今回が世界初だ。この原始惑星系円盤は、まさに惑星形成の直前状態にあると考えられる。

「渦巻きが本当に動いているのが見えた時には思わず声が出てしまいました。今回の成果は、世界最高性能を持つアルマ望遠鏡の長期間にわたる安定的な運用によって可能になったものでもあります。今後このような観測を他の原始惑星系円盤でも行って、惑星系形成プロセス全体のドキュメンタリーを完成させたいと考えています」(吉田さん)。

原始惑星系円盤の渦巻き状の構造がダイナミックに変化している様子を表現したCG

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